何も、何もされぬままに私の意識はその場にはない。
血の流れる雨はけして消えぬ刻印だから、私の顔は今泣いている貴方にはどの様な姿で移っているの・・・。
分からない。どうして、あの時の私も今の私も何も抵抗する気持ちすらない。
だから血の雨を自ら流す。腹部に刺された鋭い刃は私の元から離れても、消してその顔は忘れない。
エンヴィー:君を生かす、でもね・・・僕はお前に容赦ない・・・
:鋼のおチビさんには話さないでね・・・。約束だよ・・愛しい・・・。
その声は多少、殺戮を喜んでいて私は彼から逃げられないと想った。
何よりも今私の頭に過ぎったのは死だけ、でも流れる血は恐らく止まることはない。
エンヴィー:お父様が蘇生しようとしたホムンクルス・・・
:まぁ〜結局出来なかったんだけどね・・・。そう君がこの場に人間としているからだよ・・・。
そう言うと私の髪の毛に軽く触れて私の意識が失うまで彼は側にいた。
まるで時を数えるように、私の死を望むかのように・・・私はその後は覚えてない。だけど覚えてるのは・・・貴方の涙。
ロイ:ハボック少尉、探し出してくれ・・・私も直ぐ行く・・・。
黒いコートを羽織、急いで東方司令部を出ることにした。
そう私もそしても今日からいや昨日から全てが可笑しかった。何故か・・・。
ハボック:大佐・・・・。
そんな様子をハボックは多少、心配した。
あの時も同じ様に、上司は冷静な判断ですら出来ずにいた。認めたくはなかったのだから・・・。
リザ:仕方ないわ・・・あの人は何時もそう自分よりも周りだから・・・守る人の為に・・・。
部下達の会話は何も語ろうとはしなかった。何故だか全てを理解しているように・・・。
そして雨が降り出した。ただ誰かを迎えるように・・・・。
第五章 追憶の再現
エドワード:大佐・・・。
雨の中で大佐を見つけるのは不思議だった。雨の日は無能だと知っているから・・・。
そんな中で大佐の顔が尋常じゃないのが分かった。でも俺は今は何も語りたくなかった。
の顔を見るたびに似ていると想ったから、そして大佐も心の中では・・・・。
俺達は何も語る資格などないんだ。例えネイがこの世界の人間じゃなくても・・・。
アルフォンス:兄さん・・本当に良いの・・。
アルフォンスはそんな大佐とエドワードを心配そうに見つめていた。
元々、二人は意地を張る方が多かった。そして何より、あの時のの言葉を継げてはいない。
エドワード:良いんだよ・・俺は所詮・・何も出来ない無力な子供さ・・・。
俺は素直に認めるしかなかった。あの時の再現をしたくなくて・・・。
でも俺が知らない所で、賢者の石に関する事は動き出していた。俺はまた何も出来ないままなのだろうか。
ハボック:大佐・・・。
東方は広い、そんな中で探し出すのは苦労した。
ただ何よりも私が失うのが怖いと想ったのはたった一人の人間だ。それなのに・・・。
ロイ:血の・・・血の匂いがする・・・。
探し回って数時間、ある場所で何故か先程から血生臭い匂いが辺りを漂っていた。
そんなはずはない。あるはずがないと想いながら私はその場所を見つめた。
けれどもそれはであって、私は何も言わずに彼女の側で彼女を包み込んだ。
まるで壊れ物をするように、そして私は泣いていた。また守れなかったのだと・・・。
:ロ・・・イ・・・。
意識が戻った時、貴方の顔で良かった。あの顔だったら私はどうなったのだろう。
多分、死んでも構わないという感情が出てしまうから、でも本当に貴方で良かったと想った。
私の意識がなくなりかけた時のロイの声が何故か、私を支えていてくれた。
出血が多すぎて、何も動くことも出来ずにいた・・・・。
エンヴィー:ラスト、あれで良いの・・・彼奴は扉を知ってる。
沈黙の中、ある建物での会話・・・。それは今後の行く末。
ラスト:どの道、お父様は気にしてるのよ。突然現れた彼女にね・・・。
:今は、焔の大佐にあの子を預けましょう・・・何れ分かるわ・・・・。
黒い影が二つ。ただそっとロイとを見つめていた。
エンヴィーは手に付いた血を舐めている。そして何処か笑っていた。
エンヴィー:んにしても・・・彼奴、ただ者じゃないね。
:扉の事は知ってる様子を見せない。おまけに何か隠してる。
エンヴィーの笑いは今、楽しいものを見つけた玩具のようだった。
そしてラストはそんな様子を見つめていた。大事な人柱を見つめるように・・・。
細い管が私の身体を通って薬を与えていた。此処は病院だった・・・。
何も思い出せない。でも何故か私の手を握っているのはロイで、私は何故か微笑んでいた。
ハボック:気が付いたようっすね・・・大佐、一晩中見てたんっすよ。
病院内の室内で花束を持ってハボックは入り口にいた。
私はその前の事がおも出だせなくて、その場の状態に行動が出来なかった。
ハボック:でも、助かって良かったよ・・大佐、ずっと後悔してたから彼奴を失って・・・。
私は何故か、何時も思ってしまう。私は誰の為に生きてるのだろうと・・・。
そして、彼は私の知っているロイじゃない。そう想った瞬間に私は鼓動が高鳴った。
ハボック:まだ語ってなかったすね・・・。
:もう知ってます・・・魔術って厄介ですから、何も知らないと心を読んでしまう相手の心を・・・。
私は其処では笑えない。でも何故かもう迷惑はかけられないと感じてしまった。
そして何より、それを説明しなかった事がロイに主にを背負ってしまったのだから・・・。
ハボック:そうっすか・・・じゃぁ〜もう知ってるっすね・・・。
私は頷くしかなかった。だって私が面に気持ちを表さなかったのはその為だから・・・。
そして何より、今はロイの感情を癒したいから・・・。
ハボック:医師からの話じゃ、腹部の傷残ってしまうようっす・・・。
椅子にハボックがもたれかかって、そう告げた。でも私はそれで良い様に想った。
この傷跡はけして消えない存在なんだって事も、そしてロイは恐らく二度と私を手放さないだろうと・・・・。
:後悔はしてません・・・何も・・・
気が付けば、ロイは瞳をまどろみながら開けた。そして何よりハボックも気づいたようであって・・・・。
私は、ただロイに対して優しい微笑みを見つめるしかなかった。
:ロ・・・イ・・・?
抱きしめられた時、私は直ぐに鼓動が高鳴った。顔が朱に染まってでもロイは私を放そうとしなかった。
ハボックはそれに気づいたのか、その場をそっと離れてしまった。
ロイ:失うんじゃないかと想った・・・。本当に・・・俺に全てを・・・。
それでも貴方は何も告げないのね。そう何も、本当に・・・。
それでも私は思い出した。貴方は私の知っているロイじゃない。それ以上にもっと大切な存在。
:それは・・・誰を思っての事ですか・・・。
私はただ真実を知りたかった。なのに言葉は正直で、私は彼を気づ付くと知っていながらの言葉。
ロイは我に返ったように、何を語ったのか思い出そうとしている。でも・・・。
私はそっと、ロイの頬に手を触れる。ただ何もなかったように・・・。
それでも私は今は分からない。この気持ちがなんなのか、でもロイは分かっているのかも知れない。
:失って初めて本当の気持ちが分かるもの・・・ね、話してくれても良いでしょ・・・。
私は真実を知っている。でも私が知っている事をロイは知らない。だから彼の気持ちを慰める言葉は・・・。
慰めの言葉は、その場でロイに真実を話すこと、そしてその気持ちを安らいであげる事。それが特効薬・・・。
ロイ:・・・・・・・・・・・・・・・。
でも、貴方は気持ちを伝えるのが下手なのね。何時もそう何時も・・・。
唇を奪っても、そして何も告げようとしなくても、貴方は気持ちを隠そうとする。それが真実。
ロイ:今の言葉は・・・忘れてくれ・・・。
去ろうとするロイ。そう逃げるんだ・・・全ての現実から・・・。
そして何より、私からそして何よりエドワードや全ての思い出から・・・。
:っはぁ〜馬鹿・・・。この無能!
私は本当に咄嗟だった。傷は痛むのに・・・でも何故か今止めなければ意味がないと思った。
だから、錬金術を使った。本当は全く異なる錬成なのに・・・簡単に扱えた・・・。
錬成反応で、氷の刃がロイに向かう。そう私は咄嗟にピアスをロッドに変えてしまった。
私達の世界では錬成陣は滅多に使わない。変わりに魔術と同じロッドに刻まれた紋印から使われる。
ロイは直ぐによけてくれた。当たったらどうしようかとも思った。
でも何故か、私は怒りに我を忘れてて、傷の事もすっかり忘れていた。なのに・・・。
ロイ:いきなり何をするのかね・・・。
驚いている表情から何故か呆れた表情をするのはロイの事。
でも何故か心配そうな顔を私に向けている。でも私は貴方が過去に逃げている方が嫌い。
だから私はまた。何故か使ってしまう。錬金術を・・・。
紋印が陣を描くのは独特で、此方の世界の錬成方法をもう少し知っておくべきだった。
:馬鹿馬鹿・・・馬鹿無能・・・。
ロイ:はぁ?
怒りで私は何故か、忘れてた。ロイは私の錬成したものからよけるのが多かった。
病院内でのこんな関係など誰も観られたくはなかったけど・・・でも私の気持ちは収まらなかった。
:気が済んだかしら・・・貴方が思ってるのは・でしょ?
そしたら不思議と気持ちが晴れ照った。私から話すのも馬鹿なのに・・・。
ロイが怒り出す事を知っているのに、なのに私は馬鹿だ。他人の心を開こうとするのだから・・・。
ロイ:何故、それを・・・何故、それを君が知っている。
偽りを話しても彼は心を閉ざしてしまう。
だから真実を話すしかない。今のロイに必要なのは大切な存在。私にはそれが分かるから・・・。
:・・・・私は幼い頃から簡単に他人の心を理解しました・・・
:何故か、夢に見るのよ・・・夢だけではなく現実でも・・・。
今この場で貴方に殺められても構わないと思った。
でも彼の表情は怒りから何故か戸惑いになって、そして私を見つめる瞳が優しさに変わった。
ロイ:この世界にいる時はエルリックの性は使うな・・・。
私の頬に触れるロイ。でも私は戸惑った。何故か・・・。
それは貴方の瞳が真剣そのものであったから、そして私に告げる言葉も強気で・・・。
:どう・・・して・・・。
ロイ:の性を持って貰えないか・・・私の心が癒えるまで・・・。
その瞳からは何故、涙が流れてるの・・・。
貴方の言葉からその人物の存在を知りたいと思った・・・だけど・・・。
それでも私は頷くしかなかった。それで貴方の心が癒えるなら・・・。
そう私の居場所は此処にしかないから・・・何故か、私の気持ちは変わり始めていた・・・心の奥で・・・。
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