アリア社長:ぷいぷ・・ぷいぷ・・ぷいにゅぅ〜
蒼い瞳に首にリボンを結んだ小さな黒い子猫・・・。
アリア社長はその子猫に時々、私達に隠れてあっていた。
「ミャァ〜ミャァ〜」
その真夜中に響いた小さな子猫の声は、アリア社長の耳には深く届いていた。
それは小さいながらも幸福をもたらしてくれた気紛れな物語・・・。
その子猫が本当は誰の飼い猫なのかも分からないのが真実だった。
それでも何処か可愛らしいのは、それが子猫だからじゃないような気がした。
:おいで・・・。
それから私、の物語は始まったようなものだった。
ほんの少し、微かにアリアカンパニーで隠れて飼育するのはちょっぴり楽しい。
ドキドキとハラハラがこれからの私に招かれているような気がするから・・・。
始まりは本当に唐突で仕方がないのかも知れないのだけれども・・・。
それでもこれが始まりだから・・・私にとっての物語を・・・。
その、猫が招いた幸福に・・・。
「お姉ちゃんは何の為に、水先案内人になったの・・・」
夢でそう聴いてきた黒髪に蒼い瞳の少女が私に聞いてきた。
私はどうしてあの時に、夢を抱えて水先案内人になったのだろうと思ってしまった。
本当は私も何処か地重管理人になるはずだったのに・・・。
でも誰かと約束をして私は、水先案内人になった事は覚えているのに・・・。
:どうして・・・なったんだっけ・・・。
そう考えても私に教えてくれる人がいるはずがないと思うのは仕方がなかった。
考えても分からず仕舞いで、今日もまたその事を考えてしまうような気がした。
灯里:ちゃん・・・溜め息付いてるけど大丈夫・・・。
私にそう呟いてくれた同僚の灯里ちゃんが話しをしてくれた。
灯里ちゃんのゴンドラに乗っていたアリア社長が顔を出して声を表した。
アリア社長:ぷいにゅ・・・。
アリア社長を見ると何処か、私の室内においてきた小さな子猫を思い出した。
アリア社長は知っているから、時々遊んでいるけど・・・。
でも本当はその子猫の存在を知ってほしい何て思ってしまったのも真実。
そして何より、どうしてこんなにも毎日が楽しいのに、何処か過去を思い出そうとしている。
もう訳が分からなかった。本当は手袋なしになる前に帰ろうか悩んだ。
そう私は元々、地重管理人になるのが当たり前だと思われていたからだ。
元々地下で小さい頃から育ったのだから仕方がないのだけれども・・・。
でも本当は水先案内人に憧れて此処にいるのに・・・。
本当に訳が分からなくなってしまったのが真実なんだろうなと思った。
だから何処かもう水先案内人になるのを止めようと弱音を吐いていた。
:ちょっと・・・分からなくなってしまったから・・・。
そう呟いた私を心配そうに見ているのは、灯里ちゃんで、どう答えて良いのか分からなかった。
勿論、元気だからという言葉を今は出せないのが事実なのでしょうがない。
返事をする前に、灯里ちゃんは外へと出て行ってしまった。
後を追うようにアリア社長もくっ付いている・・・どうやらお客のようで・・・・。
アリシア:たまには故郷に帰るのも良いと思うわよ・・・。
そう呟いてくれたのは、生クリーム入りココアを持ってきてくれたアリシアさんで・・・。
その言葉に私は何処か考え込んでしまった。そう、最近何も考えてなかった・・・故郷の事に・・・。
ウッディー:灯里ちゃん・・ちゃん今日いる?
外の方で灯里ちゃんがウッディーさんと話をしている。
それをそっと見つめていて、私に用事なのかなと思ったけれども・・・。
灯里:はひぃ〜今・・呼んで・・・。
私を呼ぼうと部屋の中に入ろうとする灯里ちゃんをウッディーさんは呼び止めて・・・。
そして灯里ちゃんの手に小包を手渡した・・・。それは私宛らしく・・・。
ウッディー:名無しの小包預かってるんだ・・渡しておいてくれ・・・。
そう呟きながらウッディーさんは仕事に向かってしまったのだった。
それでも何処か私は呆然とその姿を見つめていた。
目の前に小包が置かれているのにも目もくれないで呆然としていた。
そんな私にアリシアさんと灯里ちゃん達が心配をしている。
:・・え・・えっと・・何だろう・・・。
無理に明るく振舞って、そして小包を開けた。
其処にあったのは私の小指サイズにあった指輪と、子猫の首輪だった。
灯里:首輪・・ですね・・・。
そう呟いたのは灯里ちゃんは何処か不思議がっていた。
子猫を飼ってるのを知ってるのは私とアリア社長だけのはずなのに・・・。
「ミャァ〜ミャァ〜」
小さな子猫の声がこの部屋に響き渡った。
アリア社長はそれに気が付いたのか、子猫の方面に向かっていったのだった。
「ミャァ〜ミャァ〜」
そして子猫が顔を出すと、アリア社長はその子猫を見つめた。
アリア社長は子猫とじゃれあっていたのだった。
アリア社長:ぷい・・ぷいにゅぅ〜
そんな子猫をアリア社長は知っていたのか、この部屋内で楽しんでいる。
アリシアさんと灯里ちゃんはそんなアリア社長を見つめながら疑問に思っていた。
灯里:アリア社長・・・。
子猫の事がばれた・・そう思われても仕方なかった。私はその場で席をたった。
そしてアリシアさんと灯里ちゃんの前で誤るしかなかった。
:アリシアさん、灯里ちゃん・・・ごめんなさい・・・その私・・・。
子猫を飼っていた事を正直に話をして、それでも何処かアリシアさんは笑顔だった。
つまりその笑顔は、私が内緒で子猫を買っていたのを知っていたのだ。
:知ってたなら何で・・・。
驚きと何処か呆れ気味にアリシアさんに聞いてみたけれども・・・。
それでもアリシアさんは楽しそうに微笑んでいる。
アリシア:だって・・いつかは話してくれると思ったから・・・そうでしょ?
それが本当の真実で、その日から隠れずに子猫を飼う事が許された。
その理由はアリア社長が、子猫とじゃれあってるのに引き離すのが無理だったから・・・。
それだけじゃなくて、子猫の事も考えていての事だと分かったから・・・。
私は何処かそんな優しさが、アリシアさんの優しさが安心できた。
「お姉ちゃんは誰を待ってるの・・・。」
また同じ夢を見た・・・。その少女は私を見つめながら毎回笑顔だった。
それでも何処かその夢を見るたびに考え込んでしまう自分がいたのだった。
そして私は久しぶりに故郷に帰る事にしたのだった。
何処か懐かしいのに、此処が始まりである事を忘れてしまった。
地下への入り口を入り、暫く途方にくれていた。
何処か地重管理人の仕事場に来ていて、そして眼鏡をかけた彼を見つめていた。
アルバート:約束・・守ってくれたんですね・・。
彼が私に気付いて、そう呟いてくれた。私は何処か考え込んでしまった。
彼が私にそう告げて、何処か笑顔で見つめている。私は何を忘れていたのか思い出せなかった。
:え?
私は何処か微笑む事も忘れて、考え込んでしまっているのだから・・・。
私の腕の中で眠りについている子猫は、何処か安心しきっている。
一緒に何処か、不安で連れてきてしまった子猫・・・。
その子猫を見つめていると、何処か自然に笑顔が漏れた・・・。
アルバート:覚えていませんか?僕、さんと約束しましたよ・・・。
そっかあの時、名前も知らない貴方に私は約束をしたんだっけ・・・。
そう水先案内人になると・・・。
だから約束を果たした時に此処に戻ってくるという事を忘れていた。
私は今、何処か思い出したような気がした。
アルバート:その時に名前を告げる約束もしましたよね・・・僕の名前を・・・。
子猫は私を見つめていた。寝ていたはずの子猫が・・・。
それでも何処か嬉しく思えたから仕方なかった。
アルバート:これでやっとお互いに叶いましたね・・夢を・・・。
それから私達はお互い必死に自分の約束を守る為に修行をした。
アル君とはその時になって、名を知ったのに本当の意味で名を知っていたような気がした。
だけど、これからは会う機会があると思った・・・・。
お互いに心に約束をした希望があるのが、その真実だった。
その日の夢で、少女は私にこう告げた・・・。
「お姉ちゃんはやっと思い出したね・・・自分の希望を・・・。」
その少女は何処か私の膝で眠っている子猫がくれた幸福だと思った。
本当の意味で、此処からの物語が始まりを告げたのだと思った。
〜 Fin 〜
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Music Box/遠来未来-Enrai_Mirai- by:七曜-金- |