風の気まぐれで、本当に唐突に、私と貴方は出会ってしまった・・・。
これが始まりとも知らずに、そしてまた今日も名無しの贈り物が私の元に届く・・・。
「ミャァ〜ミャァ〜」
隣で、私の唯一の家族の子猫がずっと鳴き声を出していた。
主にお腹が空いた事を証明するように、ずっと先程から主を見つめている。
:誰が送り届けてるんだろうね・・・。
そんな言葉を私は子猫に呟きながら・・・台所に向かった。
そして子猫も私の側を付いてくる・・餌が貰えると信じて・・・。
:分かったから・・・待っててね・・・。
そう呟きながら私は猫の餌である缶詰を開ける・・。
皿に移して、私の大切な小さな家族に食べ物をあげる・・・。
子猫は喜んでくれたのか、その餌を美味しそうに食べ始めた。
何処か、子猫は私を元気にさせようとしていた・・・。
「ミャァ〜ミャァ〜」
食べ終わったのだろうか?子猫は皿に手を置きながらもっと欲しいと鳴き声を出す。
そんな子猫を私は暖かく見つめていた・・・子猫の表現はとっても分かりやすいから・・・・。
でも人との関係はそうでもない。名無しの宛先・・・私には分からなかった・・・。
誰からだろう・・・ずっと風の気まぐれなのは分かっていたのだけれども・・・。
でもそれが、私にとっての幸福か不幸かは分からない・・・。
その、風の気紛れに・・・・。
藍華:大体焦れったいのよね・・・。
昼食を取りながら、私は藍華ちゃんとウッディーさんとお話をしていた。
藍華ちゃんもウッディーさんの事は良く知っていて・・・。
灯里:でも・・でも・・・。
ウッディーさんの照れ屋な所も、私達は初めて会った時から知っていた。
なのにまだ、彼女、オレンジぷらねっとで水先案内人として修行見習いのちゃんに返事をしていない。
ウッディー:でも仕方ないのだ・・・彼女の前だと・・・。
何処か緊張してしまう。それは毎回ウッディーさんから話を聞かされていた。
だから、名無しの贈り物をウッディーさんは贈っている。まるで風の気紛れのように・・・。
藍華:其処が焦れったいって行ってるのよ!
藍華ちゃんはそんなウッディーさんに人差し指を指して注意している。
まるで全てをお見通しだ・・・っとでも言いたげなように・・・。
アリス:でっかく・・・先輩は人気高いですから・・・片方だけの手袋でも・・・。
マルゲリータのピザをアリア社長とまあ社長と仲良くアリスちゃんは頬張りながら呟いた。
口に加える度に、チーズが延びていき、噛むのにも一苦労だった。
藍華:まぁ〜はそうだからねぇ〜
指導員がちゃんのゴンドラに乗っている所を毎度見ているけれども・・・
片方だけの手袋だけの実力で、あれだけの人気があるのだから仕方がなかった。
その為、ちゃんが個人練習をしている時は時折、指導員が付いてくるのだけれども・・・。
それでもちゃんはまだ実力としては認められないと語っている訳で・・・。
灯里:ちゃんってゴンドラ漕いでる時って水の妖精さん何だよね・・・・綺麗で・・・。
その言葉に嘘偽りはなくて、何処かその言葉に反応をした藍華ちゃんは・・・。
また私の前で大きく人差し指を指して、呟いた・・・。
藍華:恥ずかしい台詞禁止!
その行動には、毎度私は脅かされるのだけれども・・・。
でも長年付き合っていたら、もう既に慣れてしまったのは言うまでもなくて・・・。
灯里:えぇ〜
それが藍華ちゃんなりの感情だって事も私達は分かっていた。
そんな会話はいつも、日常生活の中では当たり前の事になっていた・・・。
アリス:ウッディーさん・・でもいい加減、先輩に告げないと伝わりませんよ・・・。
アリスちゃんはそんな私達を無視しながら、ウッディーさんに告げた。
今回は其処を議論したくて藍華ちゃんがウッディーさんを呼び止めたのに、何処か話が変わっていた。
ウッディー:分かってるのだ!でも伝えられないのだ・・・。
その行動にまた藍華ちゃんのスイッチが入って・・・。
何度もウッディーさんの前で焦れったい、焦れったいと大声で呟いていた・・・。
灯里:でもウッディーさんの気持ち・・・分かります・・・。
:恥ずかしくて言えない言葉ってありますもんね・・・。
私はウッディーさんを励ますつもりで、その言葉を呟いた。
ウッディーさんはその言葉を聴いて、どう思うのかは分からなかったけれども・・・。
藍華:恋いって分からないわよねぇ〜
そんな言葉を藍華ちゃんは呟いたのだった。
自分だって、アル君には告げられないでいるのに、まるで他人事のように・・・。
灯里:はひぃ・・・ちゃん・・・。
藍華ちゃんの後ろにいた人物に、私達は気が付いて硬直をしてしまった。
先程まで話をしていた事は彼女の事なのだから・・・言うまでもないのだけれども・・・・。
:やっほ・・・アリシアさんから聞いて此処に来ちゃった・・・。
そんな明るめな言葉を私達の前で振る舞っていてくれた。
今日もちゃんの首には、名無しの送り主・・・って言ってもウッディーさんからのプレゼントが身に付いていた。
:ウッディーも久しぶりぃ〜修行で忙しかったからね・・・。
そんな会話をしながら、空いている席にちゃんは座った。
定員に飲み物を頼んで、そして私達の顔を見つめる・・・。
:どうかした・・・?
どう話を切り出そうか、そんな私達の顔を見ながら、心配をしてくれたのはちゃんだった。
それでも話をしなければ、何もはじまらなくて・・・・。
アリス:先輩・・お仕事終わったんですか・・・。
最初に切り出したのは同僚のアリスちゃんだった。
そんな質問にちゃんは軽々と答えていった・・・・。
:指導員のアテナ先輩が、お客さんいるからね・・・。
そして午後からはいつも私達とのゴンドラ漕ぎの修行だった・・・。
それは短くとても楽しいことで・・・思い出にもなっている。
ウッディー:お仕事、大変なのだ・・・。
そんな励まし言葉をウッディーさんはポツリポツリと呟いていった・・・。
それは当たり前の感想で、藍華ちゃんは何処かその言葉に焦れったさを感じていた。
藍華:いつに・・・なったら・・・。
そんな呟き言葉に、私以外の誰かが、反応をするはずはなくて・・・・。
ウッディーさんはそんな藍華ちゃんに多少は恐怖を感じているようであって・・・。
:でも私、午後から晃さんと会う約束なのよね・・・・。
何処か藍華ちゃんは晃さんの言葉が出た瞬間に硬直をしてしまった。
藍華ちゃんにも苦手な事があるのは当たり前なのだけれども・・・。
藍華:な・・何で晃さん・・。
でも仕方のない事だった。ちゃんは晃さんとは幼馴染みだと聞いているし・・・。
何処かそんな会話に花を私達は咲かせていた・・・。
昨日の夜、私は一度両親に会いに行って、またオレンジぷらねっとに戻る事にした。
休みを使って両親に一度は挨拶に行かないといけないなと思ったからだった・・。
その話を藍華ちゃん達にしていく私、何処かその会話にウッディーは照れている。
偶々、昨日は実家に帰っていて、ウッディーさんに荷物運びを頼んだっけ・・。
そして何一つ変わりなかった・・・そうただ一つだけを除いて・・・。
風の気紛れのように、私が何処にいても送られてくる贈り物・・・。
そして今日も私はまた修行の為に、社に戻る事にしたのだった・・・。
時折実家に戻ってくるのは楽しい事だったけれども・・・。
それでも何処か落ち着く場所は、オレンジぷらねっと内で・・・。
だからって怠けている訳でもないよ・・・そう思った。
確かに、家族と一緒にいると飼い猫の事も面倒を見るのは好きだった。
だけれども、それ以上にオレンジぷらねっとには私に大切な物をくれる場所であって・・・。
:え?良いんですか・・・。
午後、晃さんに会って、ゴンドラ漕ぎの練習を見ていて貰った時の事だった。
嬉しい反面、何処か緊張をした・・・・勿論、頷いてしまったけれども・・・。
晃:っで?荷物はこれだけなのか?
今日は晃さんが、夜に姫屋に宿泊しろって誘いが来て・・・。
理由は簡単、久しぶりに花を咲かせたいと言っていたからだった・・・。
そして謎の贈り物は、何処か私は心の中ではウッディーさんではないのだろうかという事を理解していた。
それでも気持ちは突然変化していく事であって・・・その事はまだ遠いような気がしたのだった。
:あの晃さん、今日は有り難う御座いました・・・。
時間がたつのは早くて、姫屋には昨日の夜に訪れたばかりなのに・・・。
でも次の日は突然訪れて、そして朝になった・・・。
それでもいつ何処にいても送られてくる贈り物は、この場所には届かなかった・・・。
それを少しだけ残念に思った。でもそれはほんの一瞬の事だった・・・戻ってきた時には・・・。
その日、オレンジぷらねっとに戻った時に小さな贈り物がまたあった・・・。
本当に風の気紛れなのだと思った。これを送ってくれる人は・・・。
だから、そんな気紛れな風の送り主さんに、私は一通の手紙を書いた・・・。
心から有り難うという感謝の気持ちを込めて、そして今度は貴方の顔を見たいと願って・・・・。
そして夜風の中、その手紙を置いた・・・。
夏の夜風は涼しいけれども、送り主にはどう思うのかは分からない。
そしてそれを受け取った送り主は私に震える字でこう返事をくれた・・・。
「有り難うなのだ・・・」
その一言と、その言葉の口調からなのか・・・私は何処か誰なのか分かった。
ウッディーさんしか他にいない・・・好きって気持ちは言葉に出来なくても・・・。
小さな表現だけで、貴方の事を少しだけ分かった気がした・・・。
まだお互いが伝わらない気持ち・・・それは本当に、気紛れな私達の物語だと思って・・・・。
〜 Fin 〜
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Music Box/Dream'an 涼椰 by:悠遠の旅路往く |