遊戯王デュエルモンスターズ --古より永久への誓い 番外編 屈辱のバトル--





海馬が目を覚ますと目に入るのは小柄な少女。

世界でもっとも愛おしい存在だ。

長く、黒い髪がシーツに広がっている

そして、朝日を受けて赤銅色に透ける。

海馬は1房 の髪を持ち上げて

そっと、口付けた。

ほのかなシャンプーの香りが鼻をくすぐる。

それから、穏やかな寝顔に優しくキスを落とした。

その顔は海馬瀬人と思えないほどに穏やかで優しいものだった。



古より永久への誓い 番外編 屈辱のバトル



が目を覚ますと目の前には海馬の顔。

一瞬どきり、としたがは海馬の顔を見つめた。

茶色の髪が朝日を浴びて輝いて

今は閉じられている蒼い目を思い出す。


「綺麗…」


が髪に手を伸ばすと

指の間からさらり、と零れ落ちた。

海馬が寝ているのを確認してから唇にそっとキスをした。

そして、ベットから抜け出そうと起き上がる。


「きゃぁ!」


ぐい、と腕を引かれベットに舞い戻る。

暖かな腕に抱きしめられる。


「瀬人…いつから起きて…」

「お前が起きるずっと前だ」

「なんで声かけてくれないのよ…」


少しむくれたようにが言えば

海馬の笑った気配が体から伝わる。


「どんな反応をするのか見てみようかと思ってな。ククク、予想外にいいことをしてもらった」

「あ、悪趣味!」


海馬が喉を鳴らして笑うのを聞いて

は顔が熱くなるのを感じた。


「しかし、やられっぱなしと言うのは性に合わないからな」

「ちょっ…」


海馬はの顔を引き上げて強引にキスをする。


「んっ…」

「これで、借りは返した」


そう言ってにやりと笑う

はシーツを頭からかぶって丸くなった。

その昔と変わらない仕草に海馬は愛おしさがこみ上げてきて

そのままを抱きしめた。


「瀬人?」


シーツ越しのくぐもった声が海馬の鼓膜を震わせる。

は海馬の様子を不思議に思い

シーツを取って海馬を抱きしめた。


「大丈夫だよ」

「…ああ」


2人はしばらくの間抱き合ったままお互いを確かめていた。







「よぉ、海馬」


海馬は顔を引きつらせた。

と海馬が起きて朝食を取ろうと

食堂に行くとそこには

遊戯、城之内、杏子、舞がいた。


「食事、先にもらってるよ」

「海馬君の家ってやっぱりお金もちよねぇ」

「やっぱ、食事が全然…違う、しな」


舞、杏子が美味しそうに食事を食べる。

城之内はがばがばと口に放り込みながらしゃべる。


「ごめん…兄さま、姉さま…止めたんだけど聞かなくて…」


モクバがすまなそうに言った。

とりあえず海馬とも席に着き朝食を取った。


「それで、貴様等がどうしてここいにいる」


海馬が不機嫌そうに聞いた。

遊戯が待ってましたとばかりに立ち上がる。


「海馬、勝負だぜ!!」

「ほぅ、貴様が言い出すとは珍しいこともあるものだ」

「今回は決闘での勝負じゃなくて

 これで勝負してもらうぜ!!」


どこからだしたのか遊戯の手には

羽子板と羽が握られていた。


「羽子板?」

「ああ、正月はこれで勝負するものだと

 相棒が言っていたぞ!!」


海馬は額に手を当ててため息を吐いた。


「さぁ、勝負だ!!」

「くだらん。そんなこと、貴様等だけでやればいいだろう」


海馬はかたん、と椅子を引いて立ち上がる。

は紅茶を飲みながら様子を伺った。


「怖いんだな、海馬」

「なに?」

「オレに負けるのがそんなに怖いんだな。なら、仕方がないか」


はん、と鼻で笑って挑発する。

海馬は挑発だと分かっていても受け流すことが出来ない。


「いいだろう…その挑戦受けてたつ!!」

「結局こうなるのね」


は呆れたように呟いて紅茶を飲み干した。







海馬邸の庭には羽子板を持った

着物の集団が現れた。

海馬、遊戯、城之内は

はかまに黒い羽織という一般的なものだった。

杏子は水色の生地で下のほうに花の模様が美しい着物。

舞は赤い生地に白い花が描かれている。

ははかまにピンク色の着物を着ている。

髪は少しを後ろでリボンで縛り残りを下ろした

いわゆるお嬢様縛りだ。

審判の磯野。

そしてモクバが付き添う。


「これより、新年勝ち抜き羽子板バトルを行います!

 ルールはいたって簡単。

 参加者の皆様全員で打ち合い

 ミスをしたものから抜けていくものです。

 そして、最後に勝ちあがったものが

 優勝商品をゲットできます!

 なお、敗者には勝ち残ったもの全員に筆で顔に落書き

 という屈辱の刑が待っております」

「ってことは…最初に負けたやつが一番悲惨ってことか…」


城之内はぞっ、と身を振るわせた。

遊戯は首をかしげた。


「おい、優勝商品ってなんだ?」

「ああ、それでしたら…」

「オレが説明するぜ!!優勝商品は 姉さまの手料理か1日デート権!」

「なにぃ!?」


モクバが笑いながらさらり、といった言葉に

海馬が過剰なまでの反応を示した。

当の本人はびっくりして声も出ないようだ。


「モクバ君…私聞いてないよ?」

「さっき杏子と舞と決めたんだ!」


モクバの言葉にが2人を見ると親指を立てて

いっそさわやかな笑顔でこちらを見る2人の姿があった。


「なるほど…」

「なら、オレも負けられないぜ!!」

「オレだって負けねぇ!」

「貴様らにを渡してたまるか!!」

「の手料理食べたかったんだよね〜」

「もちろん、あたしが優勝だけどね!」


遊戯、城之内、海馬、杏子、舞が

それぞれ火花を燃やす。

はどこから持ってきたのか分からない

豪華な椅子に座らされる。


「姉さまとオレはココで観戦だよ!」

「大丈夫かなぁ…」


は心配そうに海馬を見つめた。

モクバはそんなの膝に座る。


「大丈夫だよ!兄さまは絶対勝つんだから!」

「うん、そうだね」


は膝に座った弟を後ろから抱きしめる。

モクバは少し照れくさそうに

くすぐったそうに身をよじった。


「それでは、準備はいいですか…?」


磯野の声に全員が首を縦に振る。


「それでは、バトルスタート!!」

「行くぜ海馬ぁ!!」


遊戯の放った羽が恐ろしいスピードで海馬に向かう。

しかし、海馬はにやりと笑い片手で軽く返す。やはり恐ろしいスピードで城之内に向かう。


「うわぁ!?」


ゴン、と羽子板に当たった羽が今度は舞に向かう。

羽は少し上に浮いていた。


「これでもくらいな!!」


舞は体制を崩した城之内の額に向かって

容赦なくスマッシュを放つ。


「ぎゃぁ!」


どさ、と倒れた城之内の額には羽がめり込んでいた。

遊戯と海馬はごくり、と同時に唾を飲み込んだ。


「城之内脱落!!罰ゲーム!!」


磯野が墨の入った筆立てを持ってくる。

そして、遊戯たちは筆を1本ずつ取り

城之内の顔に落書きをする。


「く、くすぐってぇ」


出来上がった城之内の顔は見るも無残だった。

少しへこんだ額には『凡骨』と書かれ

右頬には『決闘上等』の文字

左頬には『マヌケ城之内』

そして鼻には『借金返せ』。

上から海馬、遊戯、舞、杏子だ。


「すごい顔…っ!」

「あははははは!!城之内すげぇ顔!!」


は笑いをこらえたが結局最後に吹き出してしまう。

モクバは笑いをこらえずに思い切り指を指して笑っている。


「なかなかいいじゃないか城之内。凡骨にはお似合いの姿だ」

「く、くそぉ…」


城之内は何も言えずに芝生に座り込んだ。

そして、闘いが再開される。


「行くわよ!」


杏子の打った羽は先ほどの比ではないほどに早い。

海馬めがけて飛んでいくそれを海馬は渾身の力で返す。


「はぁっ!!」


そして、再び羽は杏子に戻る。

杏子は不敵に笑った。


「超必殺!!杏子、幻の左ショット!!」

「まさかっ!杏子の幻の左がっ!!」


杏子の打ったそれは遊戯に向かって飛んでいく。

遊戯は羽子板で受けるが羽子板ごと吹っ飛んだ。


「うわぁぁぁ!!」

「遊戯…」

「死んだか…」


城之内があわあわと名前を呼ぶが遊戯は倒れたままだ。

海馬はこのときばかりは遊戯を少し哀れんだ。


「ゆ、遊戯さん…」

「杏子って怖い…」


とモクバがお互いに思うのは同じことだった。

遊戯の羽子板から煙が出ているのは

目の錯覚だと思いたい。


「遊戯、まだまだね!!」


そして、遊戯もまた無残に顔に落書きを施された。

海馬は額に『ライバルよ永遠に』と書いた。

杏子は『まだまだね』と書き

舞は『決闘王の名が泣くわね』だった。散々ないいようだ。

遊戯は邪魔にならないように城之内の隣に移動された。

残るのは3人。女性2人の集中攻撃から海馬は逃れられるのか…?


「いくぞ!!」


今度は海馬から羽を打つ。

羽は舞にめがけて飛んでいく。


「いくよ、杏子!!」

「まかせて!!」


ばっ、と2人が並ぶと羽子板を同時に動かした。

着物の色が目の端に残る。


「秘奥義!!女を舐めるなスパイラルアタック!!」

「な、なんて陳腐なネーミングセンス!!」


海馬は秘奥義云々よりネーミングが気に障ったらしい。

羽がありえない回転をしながら海馬に向かう。

羽子板に当たるとものすごい音を立てる。


「ぐぅ…っ!!」

「瀬人!!」

「兄さま!!」


海馬は羽の威力を殺しきれずに

だんだんと後ろに下がる。


「くっ…」

「海馬君、貴方の負けよ!!」

「オレは…決闘者として最後まで諦めん!!」


海馬があの恐ろしい2人に立ち向かう勇士は

城之内にとてつもない感動をもたらした。


「そうだぜ海馬!!遊戯や、オレの無念を晴らしてくれ!!」

「瀬人、負けないで!!」

「兄さま!」


城之内、、モクバの声援を受けて

海馬は足を踏みとどめる。


「オレは…負けるわけにいかない!!はぁぁぁっ!!」


ものすごい音と共に羽子板が大破する。

そして、羽が杏子と舞の間を通り抜け地面に落ちた。


「しょ、勝者瀬人様!!」

「やったぜ海馬!!」

「瀬人…!」

「兄さま!!」


海馬は肩で息をすると

地面に肩膝をついた。


「瀬人!!」


が駆け寄ると海馬は 梨花を引き寄せて抱きしめた。

は驚いたがすぐに穏やかに微笑んで

海馬の背に手を回した。すこし乱れた着物が海馬の色気を煽った。


「お疲れ様、瀬人

 優勝おめでとう」

「ああ」


はどきどきと早鐘を打つ心臓を止められない。

まるで、体全体が心臓になったようだ。


「あらら〜あたしたちはお役目ごめんかな?」

「そうね、負け犬を連れて帰るとしましょうか」

「ま、まけ…」


城之内がショックに打ちひしがれるが

舞によって引きずられる。

そして杏子も遊戯を引きずり門をめざす。


「それじゃ、お2人ともごゆっくり!」

「邪魔したね」

「ああ、また来いよー!」


返事の出来ない たちの代わりに

モクバが挨拶を返す。

時折遠くなった影から悲鳴と怒声が聞こえてくるが

モクバは苦笑しただけで終わった。






「瀬人、疲れたでしょ?」

「まったくだ…だが、たまにはこういうのも悪くはない」

「珍しいね、瀬人がそんなこというなんて」


は海馬に暖かいコーヒーを出す。

今は海馬の部屋に2人きりだ。静かに時間が過ぎる。


「お前をオレのものだと

 あいつ等に分からせることができるしな」

「〜〜っばかっ!!」


赤くなって海馬を叩けば

その手を捕まれその胸に閉じ込められる。


「瀬人…苦しいよ」

「ああ…」


海馬は少し腕の力を緩めた。

は海馬の胸に手をついて海馬に縋り付いた。


「どうした?やけに積極的だな」

「なんでも、ない…少し、不安になったの」

「不安…?」

「こんなに幸せでいいのかなって…いつか、なくなっちゃうんじゃないかって…怖くなる…」


それは、いつかも思ったの不安。


「」


海馬がの名を呼んだ。はゆっくりと顔を上げた。


「お前には幸せでいてもらわなくては困る。それは、オレだけではなくモクバもそうだ。それに、あいつらもな」

「瀬人…」

「不安なら何度でも言ってやる。何度だって抱きしめてやる。

 だから、抱え込むな。逃げるな…オレから…」

「瀬人…ごめんっ」

「不安なら吐き出せばいい

 オレがすべて受け止めてやる」

「うん、うん…っ」


海馬は自分の胸の中に閉じ込めた小さな存在を

そっと壊れ物を扱うようにして抱きしめ直した。の顔を上げるとそっと唇に証を刻む。

1度はなれ、そしてもう1度。何度も、何度も繰り返した。



2人の誓いはいつだって新しくなる。

不安は溶けて消えていく。

お互いの暖かさを

今はただ感じていたい。



A Happy New Year!!




遅い正月の挨拶なあとがき。


あ、あけましておめでとうございます。(遅)すいませんすいません><
課題山積みで学校始まるしで…(泣)正月終わっちゃってるよ…TT

えっと初っ端からあれですいません。だけど、2人は一緒に眠っただけで
最後までは行ってません(キッパリ)意地の悪い社長に愛v

借りは返したとか言ってますが
さんが寝てる間にいろいろしてるじゃないか!!策略家だ社長…

羽子板バトル…書いてから気がつきましたが某テニス漫画とかぶるところが…(汗)
やっぱり杏子と舞は最強。幻の左はいつか出そうと温存してたネタです(ヲイ)

遊戯は無念でした…(死んでない)遊戯は杏子に勝てない!を実証しちゃったりw
こんないいかげんなサイトですが今年もよろしくお願いします。

By:竜堂 梨花様&竜堂 恋花様

この腕の中の小さな存在を護りたい…

Dream Cafeより 10000HIT企画頂きました。 配布期間 2004.12.25〜2005.01まで

大晦日と新年。日本の伝統的な遊び♪〜ついつい懐かしさに・・・
幼い頃は良く親戚の家で遊んだなぁ〜何て浮かれて読ませて頂きました。

はははぁ〜流石、社長・・婚約者は俺の者だ主張ですか・・。
羽子板のバトルでも萌えてますね・・。あのぉ〜って感じで・・・。

羽子板のバトル・・確かに火花でそうですよ・・本当に・・。
はははぁ〜良い内容でした・・そんな社長も可愛らしいですよ・・本当に・・

By:七瀬 ネイ