クリスマスパーティーが終わり
KCも落ち着いてきた年末。
落ち着いたといっても書類は山済み
会議もまだたくさんある。
海馬とモクバはばたばたと慌しげに走り回る。
はエプロンに三角巾。
そして掃除用具を持ってこの部屋を見渡した。
社長の部屋と思えないほどに散らかっていた。
古より永久への誓い 番外編 思い出と始まり
「いままでの中で一番散らかってる…これ、私1人じゃどうしようもないなぁ…」
は部屋をもうもう1度見渡した。
書類を丸めた紙くず
いらなくなった資料
まだ必要かもしれない書類
報告書にペン。鞄も放り出してある。
海馬は忙しいとそのままにしておくのが悪い癖だ。
そして、人が片付けようとすると気が散る!と部屋から追い出すのだ。
なので誰も片付けることなく
そのままになっている。
「そうだ!」
は海馬からもらった携帯を出し
そして電話をかけた。
『もしもし、?どうしたの?』
「あ、杏子?あのね…」
が事情を話すと杏子は面白そう、と乗ってくる。
遊戯たちを誘いそちらに向かうと言い電話を切る。
はフロントに電話を入れて皆が入れるようにする。
海馬は今日、1日中会議や取引の予定が入っている。
邪魔をするものは何もない。
しばらくすると杏子たちが到着して
社長室の惨状を見て唖然とした。
「すっごいのね…聞いてた以上の汚さ…」
「海馬も案外だらしないところがあるんだな」
「でも、海馬君は忙しいから…」
「天下の社長もここを見たら形無しね」
上から杏子、城之内、遊戯、舞の感想だ。
御伽と本田は連絡がつかず
静香は母親とショッピングだそうだ。
「瀬人は忙しいとそういうの気にしてられない人だから…
仕事が1段落してから自分で片付けるんだけど…さすがに、そのままにはしておけないから」
「なるほどね…社長ともなると大変ね。
私はてっきり『片付けろ磯野ーー!!』とか言うんだと思った」
「海馬君、人使い荒いしね」
「まぁ、海馬だしね」
杏子の容赦ない言葉が飛ぶ。
海馬の声真似はなかなかのものだった。
遊戯が少し呆れて言うが
舞はすっぱりと断ち切る。
城之内は珍しいのかきょろきょろとしている。
「瀬人は何かと触られるの嫌だから
自分で片付けたりするの。私は、一応許可もらってるけど…」
「へぇ〜意外と几帳面」
「そういえば、もう1人のボクは
掃除したことなかったよね!変わってあげるよ!」
『へ?あ、相棒!?またこのパターンか!!』
そうしてクリスマスのとき同様に
表に引きずり出された遊戯は哀愁が漂っている。
この場に居た全員が『遊戯最強』と心で呟いた。
「え、えっとまずは…書類をひとまとめにしてデスクにおいてほしいの。
後でいるのといらないのと分けるから。それから下に散らかってる紙くずを拾って…
資料は資料で分けて…本棚も整頓しないといけないし…あと引き出しの中も…」
やることをあげればきりがない。
とにかく手近なところから始めようと
床のものを拾い出した。
「 ー!これは資料かい?」
「これは…うん、資料で当たってる。そっちのそれは書類だから」
「OK」
舞の手元の書類を見て指示を出すと
は足元の紙くずを拾い出した。
の手に持ったゴミ袋にはもうたくさんの紙くずが入っている。
「 〜…これはなんだ〜?」
「これは、書類ね。こっちは契約書だから私が預かるね」
「おう」
城之内の情けない声を聞いて笑いながら書類を見る。
1枚はなんと重要書類だった。
「瀬人も重要書類くらいはきちんとしてほしいなぁ…」
その書類をデスクの上のファイルに挟む。
それからまた書類を拾い出すと
重要書類が何枚か出てきて 梨花は少し呆れた。
「忙しいからってさすがに…」
「これ、重要書類?」
「そうそう。結構大事なやつなんだけど…多分いつか会議に使うと思う…」
「海馬君、結構大雑把だねぇ…」
「それが傷ね」
杏子と妙に納得しながら書類をまとめる。
時間がかかったものの床の上はあらかた片付いた。
「えっと、次は…本棚行きましょうか」
「本棚って…」
城之内が周りを見渡せば
広い社長室に本棚がずらりと並んでいる。
それも結構な数の本だ。
「これ、皆整頓するのか…?」
「ううん、さすがにそれは無理だから
使ってある場所だけ整頓しよう」
たくさん本があるが
その中で仕事に使うのは極稀な話だ。
しかし、今月に入ってから資料になる本を漁ったため
1部の本棚が酷い状態だ。
本が床に散乱していたのもそのためだ。
拾っては本棚に戻すと言う作業を果てしなく繰り返す。
「こんなの読んでもさっぱりだぜ」
「あたしも専門外だしね」
「この本を資料に使うって…読むのさえ困難ね」
城之内がぱらぱらと中を見る。
舞もさすがにこの手の本は分からないらしい。
杏子は文章に出てくる単語に頭を悩ませている。
「まぁ…瀬人は頭いいし…私もあんまり分からないからね」
が苦笑しながら本を戻す。
ふ、と棚の隅に本の冊子とは違うものを見つける。
「これって…昔のアルバム?」
「おぉ、そういうの待ってたんだよオレは!」
城之内が の手からアルバムをとる。
そして、遊戯、杏子、舞とアルバムを囲む。
「これ、ちいせぇ海馬とモクバだ!」
「これが海馬か?なんだか気持ち悪いぜ」
「へぇ、海馬もちゃんと笑ってるじゃないか」
「小さい頃は可愛かったんだ〜」
城之内、遊戯、舞、杏子は各々で失礼なことを言う。
しかし、昔と比べれば笑うことも少なくなり
随分と考え方も変わってしまったのだ。
「これ、?」
「あぁ、これは多分ここに来てすぐくらいかな?瀬人が照れてるのが可愛いのよね〜」
今では見られないものばかりだった。
そしてそれは過ぎ去った時の長さを物語った。
「ココにきていろいろあったけど…なんだかんだいって幸せだったし…
瀬人とモクバ君に支えられてここにいる。私を家族だって言ってくれたの」
「そっか…あんたにとって海馬は家族でもあるんだね」
舞がそっとの頭を撫でた。
が嬉しそうに笑うと舞も笑って答えた。
「さぁ、部屋も片付いたし!皆でお茶にしよう」
「賛成!」
こうして大掃除は幕を閉じた。
「なんだ…これは」
「あ、瀬人、モクバ君!おかえりなさい」
「ただいま、姉さま!」
「 なぜこいつ等が?」
海馬は片づけを終えてくつろぐ4人を指差した。
は苦笑して海馬を見た。
「片付け、手伝ってもらったの。今年はいつもに比べて酷かったから…」
「……」
海馬は額に手をやりため息をつく。
モクバはすでに4人の下で話をしている。
「お、海馬じゃないか
お疲れだぜ海馬」
「貴様に気遣われるほどオレは落ちていない」
「んだとぉ!?遊戯はてめぇを心配してだなぁ!!」
「貴様はすっこめ凡骨め」
「なにぃ!?」
言い合いを始めた2人を他の5人が呆れて見つめた。
しかし、海馬の毒舌に勝てるわけもなく
城之内が言葉に詰まって終わった。
「でも、みんな本当にありがとう
おかげで助かっちゃった。いつも3人でするから大変なのよ」
「そりゃ…あれだけ散らかってたらなぁ…」
海馬の額に青筋が浮かんでいる。
そろそろまずそうだ。
それに気がついた舞が全員を立たせ外に出す。
「 !またくるからねー!」
「 、海馬とうまくやんなよ!」
「ま、舞さん!!」
杏子は遊戯の耳を持って
舞は城之内の耳を持って引きずっている。
それぞれとても痛そうだ。
扉が閉まれば社長室には静寂が訪れる。
「瀬人、仕事は…もう終わったの?」
「ああ、会議も書類も片付けてきた」
「姉さま!オレも頑張ったんだよ!」
「モクバ君は副社長だもんね。瀬人の隣に立つ大事なパートナーさん」
「うん!」
の言葉にモクバが嬉しそうに頷く。
その言葉に海馬が眉を潜めたのに気がつかなかった。
夜も更けてきた。もうすぐ年が明ける。
モクバは家に帰り睡眠をとっている。
と海馬は社長室に残っていた。
海馬は を窓際まで連れて行く。
そこにはいつもより輝きを増した童実野町があった。
「ねぇ、瀬人…私ね、ここにきて本当にいろいろあったけど…
たくさん辛くて泣いたけど…とても幸せだよ。
ここにきて、どんなときも瀬人がいてくれた。辛いときも嬉しいときも悲しいときも…」
「ああ、オレもお前がいて、幸せだ」
「ありがとう…」
海馬は の体を離して肩に手を置いた。
「 …オレは年が明けようが明けまいがかまわない。
オレはオレのロードを進むだけだ。年なんて、関係ない。
何年たとうがオレは歩き続ける。…お前は、ずっとオレについてくるか…?」
海馬は窓の外を見てから
そっと視線をに移した。
部屋の明かりが点いていない社長室で見つめ合う。
「当たり前、でしょ?私は瀬人の隣ですっと生きていくよ…もう、何度も約束したじゃない」
「何度だって聞きたくなるんだ」
「じゃあ、何度だって言うよ…貴方についていくって…」
海馬はに口付ける。
空に大きな花火が上がる。
それは年明けのサイン。
花火と夜景が二人を照らし出す。
「あけましておめでとう瀬人」
「ああ、おめでとう」
そしてまたキスを落とす。
今年はとても甘い幕開けとなりそうだ。
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