第一章 汚れなき瞳
魔界を白い粉で多う様な雪・・。
寒さに、こらえながらも、草原の先の洞穴でうずくまっている九尾狐。
九尾狐の名は、瑪瑠〔める〕。
今の状態はあまりにも悲しすぎる。既に兄妹は皆なくなってしまった。
唯一、瑪瑠の支えになっていたのが、一瞬だけの出会い人物。
たえだ魔界で知れ渡っている人物。極悪盗賊、妖狐蔵馬。
瑪瑠の脳裏に写るのは今蔵馬が何をしているのか?
そんな感情が激しく交差する。
迷ってもいられなかった。
ただもう一度だけで、良いから蔵馬に会いたい。
その感情だけが瑪瑠の心を揺さぶる。
白い大地となった場所に足跡を付ける・・。
不意に空を見上げる・・。
未だに雪は永遠に降りつもる・・。
けれど、後悔などしてはいられなかった。
ただ自分の気持ちに嘘を着くことなど出来はしない。
そして後悔を再びしない為にも・・
白い大地を瑪瑠は走り始めた。
森の中を次々と走り続ける。
息を荒くしながらも、途中疲れが出てしまっても・・。
両手、両足に傷が付こうと関係なく・・。
ただ瑪瑠にとっての光を探し求めて、走り続ける。
その事に迷いはない。
喉を潤す為に滝がある川辺で休んでいた。
その近くでもう1人作業を行っている者。
妖狐であり蔵馬と似た感じを持つ。
彼女は瑪瑠に微笑むと何もなかったように姿を消した。
瑪瑠は、何も知らない・・。
彼女自身、瑪瑠が蔵馬を追いかけている事に知るはずがない。
互いに違う気持ちが交差する。
そして再び瑪瑠はかけだした。
自分自身の願いを叶える為に、そしてこの気持ちを伝える為に・・。
途中、不思議な行動をする妖狐達に遭遇した。
彼らは人を捜していた。どんな理由かは知らずに・・。
そしてその運命が3人を集わせる・・。
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