金盞花


今日もまた帰ってこない


きんせんか別れの悲しみ


「ウィンリィ!上客が来たよ!ウィンリィ!」

ばっちゃんの声に私は、慌てて持っていた用具をそこらに投げ捨てベランダへと走る。


ずっと待ってた・・・ずっと・・ずっと待っていた・・・・・


幼い頃からずっと恋心を抱いていたヒト
三年ぶりに出会うあのヒト

元気かな?怪我・・・してないといいな

「よぅ、ばっちゃんまた たのむよ」


エドの元気そうな声が小さく聞こえる

良かった・・・エド元気だ


私は、安心したため溢れてきた涙を腕で拭いなんでもないフリをしてエドを出迎えた

「来る時は先に連絡入れろってあれほど言ってんのに・・・・・」

私は、ワザとエドに聞こえるように足音を響かせる

「こらー!!エド!!」

そう叫び私はエドの後頭部目掛けてスパナを投げる
エドの顔が後ろからでも青ざめるのが手に取るようにわかった
私は、また溢れ出そうになる涙を堪え怒鳴り声を上げエドを出迎えた

「メンテナンスに来る時は先に電話の一本でも入れるように言ってあるでしょ――――!!」

「てめーウィンリィ!!殺す気か!!」

エドは、怒鳴り声を上げて私の方に振り向く


ああ・・・私の好きな声

愛しいヒトの声

ずっとずっとその声をその姿を待っていた

私はエドに抱きついて今まで溜め込んでいた
悲しい思いを涙にして出してしまいたかったけど・・・出来ない。

だから、思いを隠す


そして笑う

「あはは!おかえり!」

私上手く笑えたかな?変な顔・・・してなかったかな?ねぇ・・・エド答えてよ

私はエドが一階の待合室にいるのを確認するとメンテ用具を持って行った


そしたら・・・驚いた

エドの・・・右腕がないの・・・エドの右腕が・・・

見た瞬間三年前のあの日がフラッシュバックした

アルが、右腕右足のないエドをここまでつれて来たときの光景が・・・


それでも、私は溢れ出しそうになる悲しみを押さえまたなんでもないように振舞う

「んな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

「おお悪ィ ぶっ壊れた」


エドがさらっとお茶を飲みながら言う

何で?何で?そんな無茶ばかりするの?ねぇ・・・エド・・

あなたは私の知らない所でどんな危険な目に会っているの?腕が壊れてしまうほどに・・・


「ぶっ壊れたってあんたちょっと!!

 あたしが丹精こめて作った最高級機械鎧をどんな使い方したら壊れるって言うのよ!!」

あたしはエドに気づかれないように機械鎧の心配をしているように見せる

「いやそれがもう粉々のバラバラに」


あなたは・・・・・お願いだから機械鎧が壊れてしまうほどまで危険なことしないで・・・

あたしは、いつかあなたがあたしの前から消えてしまうのではないかって思ってばかり・・

ねぇお願いだから心配させないでよ・・・

 
「―――で その賢者の石の資料とやらを手に入れるために一日も早く中央に行きたいって言うのかい?」

「そう 大至急やってほしいんだ」

二人の会話がまるで遠くで話しているかのように聞こえる

「うーん 腕だけじゃなく足も調整が必要だね」

ばっちゃんのその言葉にあたしは無理矢理会話の中に入っていく

「あら 一応身長は伸びてんのね、この前測った時は●センチだったっけ」
 

あぁ・・・どうしてあたしはこんなことしか言えないの?

どうしてあたしは素直に言葉を紡げないの?
 

あなたを心配しているのに・・・危険なことをしないで
 

・・・・・って言ってしまえばどれほど楽になるか・・・・・
 

それから、ばっちゃんの提案でエドの機械鎧を三日で作らなければならなくなってしまった・・・
 

三日か・・・辛いな・・・・・


「悪いな無理言って」

「一日でも早く中央に行きたいんでしょ?だったら無理してやろうじゃないのさ」

そう言ってあたしは自室に戻る

ウソ

本当は、もっとここにいてほしい

そして、ワザと機械鎧の製作を遅らせてしまおうかと考えている自分がいる

酷い女よね

でも・・・ね

エド、あたしはあなたのことが好きなの

あなたの帰りをどれほど待っていたかあなたに分かる?

愛しいヒトの帰りを・・・いつ帰ってくるかも分からないヒトの帰りを待つあたしのキモチ分かる?

いつも・・・あなたがあたしの知らない所で死んでしまっているんじゃないかって・・・

思う自分が嫌で・・・毎日来もしない手紙をポストの中探して・・・
 

惨めで

苦しくて

辛くて


そして、今日やっと会えたかと思ったら・・・

何で?何で?
 

「ウィンリィ」

あたしが、スパナを持ったまま自室でベッドに蹲っているとドアの方からエドの声が聞こえた。

「えど・・・?」

あたしは涙に濡れた顔を腕で拭いなんでもないかのように振舞う

「なにか用?」

「いや・・・なんかおまえ・・・泣いてるように見えたから」


あぁ・・・あたしドア開けっ放しだった・・・
 

「そんなことないよ・・・あたしが泣くわけないじゃない」

笑顔で答える

「ウソだ」

「・・・・・本当よ」

「ウソつくなよ」


・・・なんでっ

なんであなたはウソだって分かるの?なんでそんな目であたしを見るの?

心配なんてしないで

あたしのココロを見ないで

ねぇ・・・お願いだから部屋から出て行って・・・


「なにかあったのか?」

「なにもないよ・・・あたしこれから作業するから出てってもらえる?」
 

自分でも驚いた

声が・・・冷たい
 

「ヤダ」

エドはそう言うとあたしの身体を優しく抱きしめる

「あっ・・・ヤダ エド!放して!」

あたしは、エドの身体を押し返そうとしたけどやっぱり力の差はあって・・・負けてしまう

「放してよぉ・・・」

あたしは声がだんだん涙声になっているのに気がついた

だけど、一度出てしまった涙は止まらない

「バカ!エドのちんくしゃ!」

あたしはそう言いエドの胸をぽかぽかと叩く

そんなあたしにエドは穏やかな声で「何があったか言え」言った。

 「・・・っ エドの・・・所為なんだから!

 あたしがいつも心配しているのにも気づかないで怪我ばっかしてきて・・・!

 久しぶりに帰ってきたと思ったらなんでなの!? なんで・・・! 

 腕が壊れてしまうほど危険なことするの!? あたしが毎日毎日・・・エドの帰りを待って・・・

 エドがあたしの知らない所で死んでるんじゃないかって思い泣いているのに! どうして!」

エドは半狂乱になりつつあるあたしの身体をぎゅっと強く抱きしめる

だから・・・あたしも無意識の内に腕をエドの背中に回していた

そしたらエドは、あたしの顎を掴み上に上げ口付けた。

「ふっ・・・ぅん・・」

あたしは苦しくて口からとてもあたしの口から漏れているなんて思えないほどの艶やかな喘ぎ声が漏れる

そして、キスされてからどれくらい経っただろうか?エドは、名残惜しそうに唇を放す

「リィ・・・ごめん・・・心配かけてごめん・・・」

エドが・・・必至に謝る

「エド・・・エド・・・あたしも・・・ごめんね・・・でも・・・

 あたしはエドのことが好きだから・・・だから・・・報われない恋だって分かってる。

 だけど・・もう一回・・・キスして」

あたしのその言葉にエドの顔がサァッと赤く染まった

「え・・・リィが・・・オレのこと・・・好きなのか?」

「うん・・・好きよ・・・大好き・・アイシテルだから・・・」

エドはあたしの言葉を遮り、さっきよりも深い深いキスをする

「ん・・・んぁ・・・はぅ・・・ん」

エドはゆっくりと唇を放す

「オレも・・・リィのことが好きだ」

「え・・・?」


ウソ・・・エドが・・・あたしのことを・・・?


「ウソ・・・」

「ウソじゃない」

あたしは、嬉しさのあまり歓喜の涙がほたほたと頬を伝う

「エド・・・えど!」

「エド ウィンリィにあいさつしなくてもいいのかい?」

ばっちゃんの言葉にオレは振り返らずに答える

「あーいいよいいよ。起きて来たら機械鎧の手入れはちゃんとしろだのあーだこーだうるさいから」

そう言って、中央に向かおうとしたエドをあたしは寝起き姿のまま抱きついて止めた

「エド・・・別れのあいさつくらいしてよね・・・あたしまた泣くよ?」

そう言って、あたしは今度は、自分からエドにそっと口付ける

「じゃ、いってらっしゃい」



Music Box/VAGRANCY by:帰り道



あれれ?たしかリクエストにはし「シリアス」だったのに・・・

これシリアスなのか?なんか違う気がしなくもないけど許してください!

By:夢雨

夢雨様、お約束通り背景入りの曲入りで展示させて頂きました。

鋼の館、期間限定フリー小説より頂きました。

エドワード×ウィンリーのカップリング小説。
シリアスってっか?ウィンリー攻めになっててエドワードが受けになってますよ?

何か・・変わったカップリング・・(*_*)