良くこの時期になると、幼馴染である彼奴が私に一言同じ言葉を告げた。
最初はヒューズしかいなかったものを・・・けれど、今は何処か寂しく感じる。
もうあの頃のように私にあの言葉をかけてくれる友はいない。
そう思ってた。幼馴染の彼奴が今、何処にいるのか知らない私に何故その言葉を・・・。
「Trick or treat」
魔女の帽子を被った幼い少女、何時も微笑んでいた。
そう琥珀色の瞳が私を見つめていた温かい光で・・・・。
「今年のTrick or treatはね・・・これだよ・・」
そう語って少女はあの頃、私は錬金術を知らずにいて・・・。
その時が始めてだった。本当の意味で初めて錬金術に触れた気持ちだった。
ただ、何もない場所から何かを作る。
それが魔法のように見えた幼い頃、そしてそれが少女だったから許せた。
あの頃の少女は今どうしているのだろう。
私は自分の首にある十字架のネックレスに触れた。
「これを持った私に会ったらそれが再会のTrick or treat・・・」
そう言って少女は、私からいなくなった。あの時はどうしてと思ったのだから・・・。
今、君は幸せなのかい・・・私は君に会いたくて仕方がない気持ちを止められない。だから・・・
忘れ去られたTrick or treat
気が付けば雨音・・・私はこの雨音が好きだった。
幼い頃に分かれた時の彼の面影が私の中に蘇るから・・・・。
私はもう二度と、貴方の前には現れないよ。
だから、最後の思いを貴方に伝えたのに・・・そうただ一言「Trick or treat」と・・・・。
それでも何処か、心の中では忘れられないでいた。
どうして、私は彼に・・・ロイに別れを告げるだけで良かったのに・・・。
:やっぱ弱いんだよね・・・。
錬金術を磨いた理由ももう分からない。
父の過ちを隠したくて、私は貴方の前から消えたのに・・・。
そう生体練成の事を・・暗黙の内の禁忌を・・・私は背負った。
それでも、やっぱり忘れられないんだよね。
ロイを・・・だから私は自らその禁忌を隠して軍の狗になったのに・・・。
それでも弱い心は強くなろうとしないから・・・どうしてだろう。心が弱いよ・・。
エドワード:よぉ〜、今回も・・・
扉を開けるのは私の知人、もしくは小さな国家錬金術師さん。
そう私は何時の間にかエドワードと錬金術に関しては互いに語り合っていた。
それは辺り前のような日常生活だったのかも知れない。
錬金術を磨く為に互いに同じ師匠の元で修行をしたのだから・・・・。
:Trick or treat・・・でしょ?欲しがってた参考書買って来たよ・・・。
:んで?エド私にくれるTrick or treatっは?
そう言うと思ったのか、エドワードは私にピアスをくれた。
本当は貰いたい人物は他にいる。でも会いたくないよ。
国家資格を取るって決めた時も、正直エドワードの支えがなければ無理だったのだから・・・。
それでも貴方は私を必要としてくれますか?ロイ・・・私が必要なように・・・。
エドワード:なぁ〜、大佐に会わなくて良いのか?だってお前幼馴染だろ?
私は年下だったけど、ロイは何時も私を見つめていてくれた。
だから、それが正直嬉しかった。だってそれ以外何もなかったから・・・。
何もない場所で、友達と遊んでいる事が一番だったから・・・。
それが本当の事だったから・・・嬉しいと思う。でも今のロイが会おうとは思ってくれないよ。
それは、私が一番良く知っている事なのだから仕方がない。
私は何時もロイの事を考えている。どうして何だろう。つい考え込んでしまう。誰も教えてくれないのに・・・。
:今のロイが私を認めてくれると思う・・・禁忌を犯して、挙げ句の果て右目を失って・・。
人体錬成をしようと考えたのは優しかった兄に会いたかったから・・・。
でも錬成は失敗に終わって、持って行かれた。私に取って大切な瞳を・・・。
だから、ロイに会う資格何て何もないよ。
私がもう錬金術を使わないのは過去の過ちをしない為・・・。
だから私は兄の為に生きよう。その為なら何でもしようと決意をしたから・・・。
元々、才能は幾らでもあった・・・だから、今はその才能を活かしてるからそれで良い。
エドワード;まぁ〜俺、もう一つお前に取っておきのTrick or treatあるから楽しみに待ってな・・・。
最後にエドワードが呟いた言葉がどうしても気になってしまった。
そう「取っておきのTrick or treat」という言葉に、何かが私の運命を変えようとしていた。何の・・・。
ロイ:鋼の・・・。
東方司令部司令室で、俺は大佐を待っていた。
そうに会わせる為だ。は会いたくないって言ってたけど、逃げてても拉致が明かないんだよ。
だから、大佐から会わせてやろうと思う。俺はの側に居られるような人間じゃない。
同じ過ちで身体を取り戻そうと考えてるのだから・・・。それだけだ。に責めてもの償いは・・・。
エドワード:・・・・・この名に見覚えがあるだろう大佐。
何時もと鋼のの感じが違った。だが、それは気のせいだと思ったがそれも違った。
そして私が聞き覚えのある者の名が出てきて、思わず鼓動が高まった。
鋼のは、その人物を知っているのか。嫌、居場所を知っているとしか思えない口調だ。
私は鋼のに冷静になって聞いてみた。
ロイ:幼馴染みの名だな・・・。
エドワード:あぁ〜其奴に会わせてやる。東方に居るんだ・・・責めて会ってやってくれないか?
:彼奴は今のままじゃやばいんだ・・・。
エドワードの話は酷く現実味があった。
は鋼のと同じ過ちを犯していた事を、私は何も知らずにいた。そして・・・。
ロイ:何故、鋼の私に・・・。
エドワード:俺はお人好しじゃねぇ〜けど・・は待ってるはずだぜ・・。
:拭い切れない罪を癒してくれる人物をな・・・。
これで良いんだ。俺に出来る事はこれだけしかない。
が、思い出を話してくれた時、大佐の存在がどれだけの存在なのか十分に分かったからな。
そんな彼奴にこれ以上の咎人を背負わせる訳にもいかないんだ。
責めて幸せになってくれれば、それだけで俺は良いんだ。今のの気持ちが俺には分かるから・・・。
ロイ:私の責任だな・・・。
の兄が亡くなった事を私は知っていた。
そうの兄が軍人だったから・・・そしては何時の間にか軍人が嫌いになっていた。
その事も私自身知っていた。だから私が軍に志願する事を黙っていた。
それが、の為になるものだと信じて・・・けれど、やはり逆だったようだな・・・。
、お前は・・・全てに置いて馬鹿だな・・・。
今の私でも受け止めてくれるのか・・・今、会いに行っても無意味にならないのか・・・。
そうあの最後のTrick or treatが別れとなったのだから・・・。
は私の前から消えた。本当の意味も知らずに・・・私は君を捜し求めた。
事実を知った私は、どうしたら良いのか分からずにいる。
けれど、考えてても無意味に等しいのかも知れないな・・・・。
ロイ:礼を言わせてくれ・・・鋼の・・・。
もう迷う訳にはいかなくなったな・・・今、君はどんな感情を持つのだろうな・・・。
私、逃げてばかりいるな・・・エドワードから貰ったピアスを付けて初めて分かった。
そのピアスに、エドワードが錬成陣を施した事が直ぐに分かって・・・。
エドワードとの出会いも唐突だったけど、それから親しくなったのも思い出だから・・・。
私、本当に弱い存在だよな・・・何で、今まで気付かなかったのだろう。
雨音が窓に響き渡って、私は雨に濡れたくて自宅近くの側で空を見つめていた。
このまま罪が背負っていく事が私の全てなんだろうか・・・もう分からないよ。
家には、何時もこの時期にロイと作ってたジャック・オー・ランタンの材料のカボチャがある。
でも作る気にはなれなくて・・・私は何時も、そのカボチャを後で料理に使ってしまうのに・・・。
溜め息が漏れた。もう寒くなってきたから・・・自宅に入ろうと思った。
そして、私は背後の人物を見て驚いた。
:ロイ・・・。
ロイ:十四年振りだな・・・・・・。
十四年前、私がまだ十歳でロイが十五歳の時、もう貴方と当てない年月はこんなに長かったのね。
でもどうして、私は貴方に会いたくなかった。だって今会っても何も意味がないでしょ。それなのに何で・・・・。
ロイ:、Trick or treat・・・。
:へ・・・。
ロイが言おうとした言葉の意味は分かってた。だけど、何でだろう待ちわびていた言葉・・・・。
そして私の唇にロイの唇が重なり合う・・・雨音などもう聞こえなくて・・・。
ロイ:二度と離さない。君が何を侵しても君は私からは逃げられないんだ・・・。
その言葉が欲しくて・・・思わず、今までの罪を消したくなった。
涙が流れた。もう私は忘れていたのに、貴方と共に過ごしたこの時期を・・・Trick or treatを・・・。
:はい・・ホットココア・・ごめんなさい。コーヒー切らしてて・・。
ロイ:いや・・君を離さないと言ったのは私だからね・・・。
結局その日は共に過ごして、共に異性に触れ合って・・・。
最も、私が好きだったのは貴方だから・・・それを忘れていたから・・・。
ロイ:かぼちゃっか・・・。また一緒に作るかね・・・。
そう囁いてくれる言葉が好きで、もっと貴方の側に居たくなっただから・・・。
:ねぇ〜ロイ・・・今度は私のお願い・・Trick or treat・・・。
ロイ:の望むままに・・・。
その日、私の家には再び二人の結ぶ、ジャック・オー・ランタンがあった。
もう迷うことなく・・・二人は此処から始まりを告げたと本当に思ったから・・・・。
|
Music Box/ツクエノウエ by:風の呼び声 |