東方司令部。廊下に響き渡る足音と声が誰かを呼んでいる。
いつも彼らが、夏にここに訪れることは行事だった。
軍の狗である彼らは練金術の勉強に集中する。
それが、国家資格である持ち主の仕事でもあったからだ。
ただ、里帰りする為だけにここに集まる約束をしている。けれど・・
真夏の太陽
エドワード:いるのかよ彼奴・・。
ただ金髪と同様の瞳を持つ少年、エドワードは髪にぐしゃぐしゃに振れる。
ただずっと悩み続けていた。このまま一人で行ってしまうかと・・。
それが、出来ないのが彼の才能なのかも知れない。
心配性な所も多少ある。また1人で突っ走ってしまうことも多い。
アルフォンス:兄さん、そんなに焦らなくてもいいんじゃないの?
兄と呼ぶ、鎧の体格をした弟、アルフォンス。
ただ、エドワードの腹立ちを押さえている。
エドワード:焦らずにいられるか!またウィンリーにスパナ投げられるだろうが・・
ただ里帰りの為だけに考えていた行動とは思えなかった。
エドワードの右腕は義肢。機械鎧の手を利用している。
それ以上に、この前の賢者の石の騒動で右腕の機械鎧を壊してしまった。
ただ里帰りは仕方がないと諦めたがやはりウィンリーの存在が怖いと思っていた。
里帰りから中央に向かう予定を彼女に話そうとしていたのだった。
アルフォンス:でもそれ兄さんの責任でしょ?何もとかに関係ないんじゃ・・あ!
アルフォンスはエドワードの後ろにいる人物に気が付いたのだった。
以前と変わらぬ黒い上下の服、羽織るように蒼いコート。
彼女、はエドワードとアルフォンスに築くと側によった。
の側には、狐と狼で合成された合成獣が側にいる。
その合成獣の名は、。
:まった?行く?
エドワード:行かない・・
あっさりとしたエドワードの返事。
の思考能力ですぐに事態が分かる。
:また機械鎧壊した訳?情けないね・・私と同じ物探してるのに?
エドワード:うるさい!だいたいウィンリーの造る機械鎧がもろいだけだぁ〜
:ガキ・・いいわけありすぎ・・
エドワード:誰がガキじゃぁ〜だってガキだろぉ〜が!
:んなぁ〜いいわけそんな事いちゃって・・
ただ平然とその場は終わってしまった。
その会話に混じるように東方司令部を仕切るロイ・マスタング大佐の練金術でその場が静まりかえった。
そんな理屈が正当になるだろう・・。ただアルフォンスはあきれている。
汽笛が鳴り響く、今で汽車の中でもエドワードの不満は残り続ける。
大佐に止められて酷く腹を立たせている・・。
確かに国家資格を持つエドワードも「黒翼(こくよく)」の二つ名をもつも幼なじみだ。
それが印象づけられているのか、軍内部ではとエドワードは恋人という噂が流れた。
けれどその噂は図星で、軍の命令以外はもエドワードも共に行動をしていた。
同じ師匠の元で修行をし、同じ様に暗黙に閉ざされた練金術の禁忌、人体錬成を行った。
リゼンブールを離れたのも、国家資格を得たのも互いに同じ。
そして自らの家を炊き払ったのも・・
:ねぇ〜エド、ひょっとしてまだ不満?
エドワード:あったりまえだ!お前が・・
:お前が?何?リゼンブール戻るの怖い?
エドワードは照れてしまった。
そして小さな声でつぶやく・・。
「「お前が、余計なこと話すな・・俺は、俺の考えがある。」」
ただの思考でエドワードの考えが察知出来ずにいた。
汽車でも口論になっていながらもリゼンブールにはついてしまう。
:やっぱ中央よりは涼しいか・・
は座席の居心地が悪くなかったのか背筋を伸ばす。
そこに広がる広野はいつも見慣れている景色。
エドワード:あぁ〜
ただどんよりとエドワードはしゃがみ込んでいる。
どうしてもリゼンブールに戻りたくなかったという気持ちの表れ。
:あのぉ〜もしもし・・エドぉ〜?
エドワード:だぁ〜もぉ〜こうなったらどうなっても構うかぁ〜
そのエドワードの思考は図星。
明るめの金髪の少女、ウィンリーの怒りは頂点に達していた。そして・・
ウィンリー:あんた何回、私が造った機械鎧壊せばすむわけ
その一言と共に、スパナーがエドワードに向かう。
毎度の事ながらアルフォンスもも見慣れてしまった。ただただ悲鳴が響く。
エドワード:ウィンリー悪かったからぁ〜
ウィンリー:いつまで壊せばいいわけ・・この馬鹿・・
その喧嘩は自然にやむ・・。
けどやはりウィンリーを怒らすのはやばいと感じた。
自身が女だから?いやエドワードとウィンリーの関係を見続けているからに違いない。
しぶしぶながらもウィンリーは機械鎧を直してくれる。
ただエドワード達にとって兄弟のように育った中だからだろう。
数日間はリゼンブールにいる予定だ。
その提案が出されたのはその日の夜・・。
ほんの少しあわただしかったがのんびりしてみるのも悪くないと考えた。
エドワード:外にいて楽しいか・・
:ねぇ・・よく星眺めにいったよね。
エドワード:あぁ〜
エドワードの瞳は優しい・・。
疲れたのかここ、リゼンブールに来る度、時間を忘れる。
それでも幼い頃の話で持ちきりだった。
途中でアルフォンスも乱入してきて・・・。
ウィンリーも乱入。
けれどやはりエドワードには、スパナーつき・・。
漫才コンビの様に、日常がすぎていく・・。
楽しい日々が終わったと思った・・けれど・・。
汽笛と共に汽車は走る・・。
そして中央に向けて、エドワードやアルフォンス、は別れを告げた。
ウィンリーはそっとそれを見つめる・・。
もう休日は終わってしまった。淡い、少ない夏の太陽。
すべてがまた思い出になる・・。
里帰りは終わる。ただ里帰りがエドワード達にとっての夏休みなのだ。
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Music Box/G2-MIDI 真河 涼 By:ふたりの時間 |