君を守る・・大切にすると君に伝えたのはこの僕なんです。
だから僕は何時までもずっと側にいるつもりです。
例えそれが、あの日僕が裏切ったとしても君は危険な賭けにでました。
僕はその時不思議に思ったんです。
運命とはいったいなんなのだろうと、君は危険を侵してまで運命を変えた理由を今の僕は知っています。
だからこの時間を大切にしたいと思う気持ちは事実なんです。本当の今の僕だから分かることです。
あの日、僕は仲間からもその信頼を全て犠牲にしました。
僕だけの個人の願いの為だけに・・・けれどもこの今を、僕は大切にしたいと思います。
あの時の僕は既に捨てたのだから・・・。
今の僕だけのありようを君と君の大切な者に伝えましょう。
君を思う心
弁慶:今日の治療はこれでお終いです。
:また後日、診察にでも伺いに来ますよ・・・。
あれから何度、君と共に診察にきて人々の命を助けた事か・・・。
君が、あの時何も僕に答えを導かなかったら今の僕はないと思います。恐らくは・・。
この京で平穏は暮らしが出来るのも恐らくは君のおかげだと僕は思います。
あの時の平家との戦は無駄ではなかったと、京の守護である応龍を取り戻せたこと。
それは今にとって物語のような出来事にしか見えません・・。
君が龍神の神子である事も・・僕が八葉であった事も・・全て幻のように思えてくるのです。
:お帰りなさい・・。
弁慶:ただいま・・・・。
あれから君は僕の側にいてくれる事が多くなりましたね・・。
本当ならこの幸せを噛み締めて良いものなのだろうか・・九郎にも皆にも迷惑をかけたこの僕が・・・。
九郎:弁慶・・久しいな・・。
懐かしい源氏の仲間。彼女の仲間は元居た時空へと帰ってしまった。
けれども、彼女は何も後悔をしていないと僕に伝えてくれた。
今のままが、彼女には幸せなのだと・・本当は何度も考えた。
僕がこの京から君の世界へ向かったらどうなったのだろうかと・・・今と同じように幸せなのだろうかと・・・。
弁慶:九郎、入らしてたんですか・・。
その場は、ただ静かだった。九郎が用意をしてくれたこの場所は・・。
僕らにとっても、落ち着いた・・そして何よりも思い出深い場所だからだった。
京に僕らが生活をする事を決めた時、九郎は何も疑問には思わなかった。
ただその答えが来ると分かっていたようで、そして何より源氏から少し離れる事も気にしてはいなかった。
九郎:まずはお祝いの言葉か・・・。
弁慶:九郎・・その言葉はもう沢山の方々から頂いているので、気持ちだけで十分ですよ・・。
あれから、龍神の神子のと共に僕は京に移り、彼女と婚儀をした。
そして月日が流れていた。彼女は、今でも神子様として京の方々には信頼をされていた。
そしてもそんな京の人々の事を気にかけていた。
気が付けば、僕は彼女の事を何より大切に思っていた・・そしても僕を大切に思っていた。
九郎:そうか・・今は幸せそうだな・・。
弁慶:九郎も忙しいのに・・何故、京へ・・。
あれからは子を身ごもった。その事は九郎をはじめ、八葉の大多数は皆知っていた。
彼女の元いた世界にいた譲ももしこの場に居たら祝うだろう。
九郎:お前等に久々に会いたいと思ったからな・・。
弁慶:僕はまたてっきりまた騒動があって手助けが必要だと思いましたよ・・。
そういって僕は少し、九郎の様子を伺う事にした。
やはり九郎はからかわれているにも関わらず照れている。そんな行動は前と変わらないようだ。
:九郎さん・・お茶でも飲みますか・・?
はそう九郎に質問をしてきた。
今は夏で、少しは涼しげな格好をしているだけれども無茶を多少しようとする。
九郎:いや・・の身体には負担がかかるだろう・・。
九郎はそう言って断った。けれども僕はずっとの側にいたから分かった。
多少の事でも少し無理をする事を・・・。
弁慶:僕が入れてきますよ・・・九郎以外にも朔殿や影時も居るのでしょう?
そう此処に九郎が居るという事は、皆が居るという事だ。
に剣を教えたリズ先生も、そして平家を裏切り源氏側に付いた敦盛も・・・。
僕は立ち上がり、お茶を入れるように準備をする。
此処は薬がほぼ多い。京の人たちの為に医療を尽くしているからだ。
の手伝いもあって、仕事は順調だった。
けれども今はは休みをとっている。少しでも無茶をして欲しくなかったからだ。
九郎:察しが早いな・・弁慶・・。
九郎は立ち上がった僕の顔を見つめている。これは昔と変わらないと僕は思った。
は僕を見つめながら微笑んでいる。恐らくあの頃よりはずっと笑顔を絶やしていないと思った。
弁慶:呼んできて下さい・・準備はしておくので、どうせ宿屋に一泊する予定でしたのでしょう・・九郎。
僕はそう言いながらも九郎は察したのか、少し微笑んでいた。
京には影時の離れ家もあるが、時折は僕の家に仲間を連れてくる事がある。その旅に何時もこれだった。
九郎:お前の思考には叶わないな・・・。
京ではひっそりと過ごすよりも人々の役に立ちながらの生活の方が既になれてしまった。
一人の医師として、そして何より守りたい者の為に・・・。
弁慶:早くしないと・・準備はしませんよ・・。
そう話しながらもこの時間が永遠に続いている。・・君がこの時間をくれたからです。
だから今、このような関係を作れるのですよ・・龍神の神子でも八葉でもなく仲間として・・・。
朔:久しぶりね・・・・。
朔殿は相変わらずに優しく接している。過去に何があったのかも、全てを乗り越えるように・・。
そんな親友をも暖かく迎えている。と朔殿との間での関係だった。
:朔も相変わらずね・・影時さんも敦盛もお久しぶりです。
は懐かしい源氏の皆を、暖かく迎えている。
僕はそんなの眼差しを見つめるのが今でも好きだった。
影時:相変わらず弁慶とうまくやってるようだねぇ〜ちゃん・・。
の素直な表情が今の僕にとっては愛しく見える・・・。
仲間との関係もそうであり、今の僕を見つめる彼女も本当に素敵に見えている。
朔:兄上・・をからかうのをやめたらどうです・・・。
そんな朔殿と影時の間の兄弟の関係も、前と同様に変わらないように見えた。
あの時のは危険をおかしてまで、運命の上書きをしていた。
そんな事を今になって知ったからより、大切にしたいという感情が芽生えて来るのかも知れませんね。
は僕のそんな表情を知っている。その瞳はとっても優しい眼差しを僕に見せているのかも知れませんね。
あれから、また月日が流れる。僕との間で、また幾多の幸せが巡っているのだから・・・。
そう運命は自分の力で切り開く事を僕は君に教えられたんです。だから・・守りたい。あの頃とは違う感情で・・・。
〜 Fin 〜
|