殺生丸の前に、私が現れるのは数年振りであった。
まだ闘牙王が生きていた頃にはこんな話することなんてないと思っていた。
でも貴方も私も互いにそれぞれを違う道として歩みだしている。
まだ貴方が西国に居て、闘牙王の後を継ぐのであれば、このような結末はなかったのかも知れないのに・・・。
私は覚悟を決めてしまった。西国を束ねる犬一族の闘牙王の遠縁に当たる者として・・・。
両親は喜んだ。それでも私は心の何故かで拒んで居た。ただ狐の嫁入りだけはしたくはなかったのが本心だった。
それでも最後に、最後に一目だけ貴方に会いたくて、私は貴方を捜し回った。
そしてやっと出会えた。私と再会した時の貴方の表情は何故か驚きを隠せないという感情が表れていた。
殺生丸:・・・何故此処へ・・・。
貴方が呟けば、連れの者達は私を見据えているだけ、ただ一人邪見だけは地面に座り込んでしまった。
邪見は私と貴方を随分知っている存在の一人であったからだ・・・邪見の側にいる人間の娘だけはいまだに分かっていない。
:久しぶりね・・・殺、話したくて来ちゃった・・・。
多分もう貴方のことだから私の噂を既に知っているのだと思う。それでも貴方にかけてみたい。
幼馴染みとして貴方と私は育ってきた。けど、私はいつの間にか貴方を恋いてしまっていたのだから・・・。
私の両親は中々子供に恵まれなかった。やっと恵まれたのが女である私だった。
ただ両親は男子に恵まれなかったことは仕方ないとあきらめていたのだから・・・。
それでも私を此処まで育ててくれたのは真実。でも好きな相手だけは自分で決めたいそう思ったのも本心である。
だから、貴方に最後だけ我が儘を言わせて下さい。貴方しか私を止めることは出来ないだろうと確信をして・・・。
狐の嫁入り
りん:ねぇ、邪見様、様って殺生丸様とどういう関係なの?
りんの言葉にわしは正直どう答えて良いのか分からずじまいであった。
正確には遠縁に当たる親戚であるが、様も殺生丸様も幼馴染みとして育てられた記憶の方が強いからである。
邪見:どうもこうも・・・様は・・・。
わしはりんの質問に正直答えづらかった。ただ二人が目の前で話されているのを見守るだけ・・・。
ただ、殺生丸様も様も今は互いの関係を断ち切ってはおられるが元は恋人同士であったからだ。
相思相愛であった頃はまだお互いの関係は良かった。だが、別れてからというものお互いの関係をわしは知らない。
いや正確には殺生丸様も様もお互いがお会いしなくなったというべきであろうか・・・。
りん:殺生丸様、様には優しいんだね・・・犬夜叉と違って・・・。
その言葉にわしは即座に突っ込んでいた「様を半妖風情と一緒にするな・・・」と、そんなわしの言葉にりんは膨れた。
だが、それ以上にわしは殺生丸様と様が何を話されているのかが気になって仕方がなかったのが事実である。
殺生丸:・・・何しに此処へ来た。私は今は忙しい用事がないのであれば西国へ戻れ・・・。
その言葉に私は「知っている・・・奈落を追っているのでしょう。」と貴方の顔を見つめ呟いた。
そんな貴方は私の表情を見るなり、何故それを知っているのかという疑問を感じていたようであった。
:殺は・・・覚えてないんだ・・・。ま、仕方ないけれど・・・。
私はそう呟くなり微かに殺生丸から顔を背け、邪見とりんを見つめていたのであった。
今の貴方にはただ奈落を追うこと以外目的はないのだろう。それでも私にはもう余り時間がないのだから・・・。
:私ね・・満月の日に狐の一族の長の元に嫁入りするの・・・。
その言葉にただ私は泣きたくなる心を抑えた。今の西国はもう犬一族の力は弱まりつつある。
当主の座を維持させるにはもう犬一族が今、最も権力が強まりつつある一族の元に嫁がなければ当主の座は維持できなくなる。
殺生丸:・・・・そうか。用件はそれだけなら西国へ帰るが良い。
私は言いたいことを告げた。でも私の側を離れようとしない貴方に私は微かに泣きたい気持ちがあった。
私自身が決めたことでも、それでも誰か止めてくれる者がいると思った。でも私は甘えていただけ、貴方に・・・。
:伝えたいことは全て伝えたわ・・・もう貴方にも会えない。だからさようなら・・・。
立ち上がり、私は微かに空を見つめ、飛び立っていった。その姿を貴方が見つめているとは知りもせずに・・・。
殺生丸様は、ずっと様が去っていった方角を見つめていた・・・。わしは様を止めることすら出来ずにいた。
殺生丸:邪見・・・西国は今どうなっているのか調べろ・・・。
殺生丸様の言葉にわしはただ瞬きをするばかりであったが、殺生丸様の「早くしろ・・・。」の言葉に頷いたのであった。
そんなわしと殺生丸様のやり取りをただりんは呆然と見つめ続けるだけなのであったが・・・。
殺生丸:私以外に嫁の貰い手などおらぬぞ・・・・・・。
そう呟くなり殺生丸様はりんに顔を向き、その場でりんの表情に「どうしたのだ・・・。」と呟いたのであった。
無論、りんは頭の回転が速かったのか理解をし、「何でもないです殺生丸様・・・。」と良いながら、食べ物を捜してくると告げたのであった。
無論、りんの行動に殺生丸は微かに不安を感じたのか、阿吽が微かに頷きりんの後を同行したのであった。
殺生丸はそれからまた空を見つめ考え出してしまったのであった。今、西国がどうなっているのか皆目情報が入ってこない為、分からないのだ。
それから数時間した後に邪見が戻ってきたのであった。既にりんは食べ物を入手し、食を楽しんだ後なのか、殺生丸様の側で眠っていた。
そんなりんを気にもとめずに殺生丸は邪見に西国の情報を話すように促したのであった・・・。
邪見:犬一族の勢力が衰えているようです。
:幸い、力を強めた妖狐の一族が当主の座は犬一族の者だが血縁を寄越せと申されまして・・・。
その言葉に殺生丸は微かに不機嫌になったのであった。察しがついたのである・・・それがになったのはいうまでもないことだった。
そんな殺生丸の不機嫌に邪見はもうたまらないというように微かに怯えているのであった。
殺生丸:この殺生丸を怒らせるとは・・・邪見、妖狐の当主に伝えろ、は私の者だとな・・・。
その言葉に邪見は「分かりまして御座います。」と告げるしかなかったのであった。
それから目的が一時的に奈落を追うことから西国に向かうという目的に変わっただけの事であった。
:え、今なんて・・・。
満月が近づくにつれてに語られた真実に正直、驚きの余り瞬きをするばかりであった。
無論、にはことの経緯を聞いた訳ではなかった。それでもその一言にはただ瞬きをするばかりであった。
「ですから様ではなく、犬族のもう一つの遠縁、様が狐の嫁入りを果たします故・・・。」
その言葉はにとっては十分理解出来た。けれどもその後の出来事である。
無論、にはいまだに訳が分からず、何故このような結果になったのか理解不能なのだが・・・。
:えぇ?何がどうなってるのですか?
の言葉に従者はただ困り果てるばかりである。無論、いきなりのことなので両親は驚いているようなのだが・・・。
そんなに溜め息を吐きながら従者は語り出したのである・・・無論、のいる前で・・・。
「何度かお伝えしましたよ、貴方は犬族の当主、殺生丸様の妻となるよう婚礼の準備を行っております。」
一時的とはいえ当主が戻ってきたにも関わらず、はいまだに考え込んでしまっているのであった。
それは当然のことなのだが、殺生丸自身もうのことに関しては恋愛感情などないものと思っていたのだが・・・。
:はぁ〜!?何がどうな・・・え?
のあわてぶりに、従者は誠に呆れその場でが冷静になるまで待ち続けた。
が落ち着きを取り戻したのはもう一人の従者がお茶を用意して持ってきてくれた時のことであった。
「お確かめになった方が宜しいですね・・・その方が納得なさりましょう。」
その言葉にただは頷き、従者達はその場を離れていったのであった。
は微かに溜め息を吐いた。そして微かに腹部を少し触れて、あの時のことを後悔していた。
:逃してくれないのかな・・・貴方は・・・。
はただ溜め息を吐き、西国の当主の屋敷を訪れることを内心で覚悟を決めたのであった。
無論、事の結末の事実を殺生丸に聞くべくであるのだが、は自分自身それが気まずかったのはいうまでもない。
西国についたのはから事実を聞いたその後であった。突如として戻ってきた闘牙王の息子に皆驚いていたのである。
無論、殺生丸の連れに正直従者達は注目するばかりであったのだが、そう人間の小娘のりんにである。
「主よ・・・何故いきなりお戻りに・・・。」
従者の一言にただ殺生丸は微かに立ち止り、その従者を見つめ微かに溜め息を漏らしたのであった。
そして今の西国の統制に関して聞いたのであった。犬族の勢力は僅かに衰えつつあるがそれでも妖狐よりはありあまっている。
殺生丸:それで犬族の血族を迎え入れる気になったのか・・・。
従者の説明を聞きながら、殺生丸は何処か悲しげなの表情が脳裏に浮かんだ。
今の犬族では統制を維持するので精一杯であろうが、当主が戻れば妖狐の一族の勢力も静まるであろう。
「あの・・・主よ、それで様をっと・・・御母堂様が仰せになったので・・・。」
その言葉に殺生丸はただ不機嫌になったのであった。無論、御母堂は過去のと殺生丸の関係を知っている。
無論、肉体的関係も恋愛的関係もだ。互いが、婚姻を決め込んでいた事すら御母堂は十分承知していた。それでも・・・。
殺生丸:母上が・・・。ではなく代わりの者を探せ、いや妖狐の当主には相思相愛の犬族がいたな・・・。
殺生丸はを自分以外の男の下へと嫁がせたくはなかった。
咄嗟に思い当たったのは今の妖狐の当主が恋焦がれていた人物がいたことであった。
「その存在は確かに・・・ですがその方はと結ばれるのならば自分は適わないっと・・・。」
その言葉にある意味殺生丸は納得してしまっていた。過去、に求愛をしてきた者は殺生丸やほかの妖怪達から幾度もあったのだ。
それをは拒み続けた。やっとのことで、殺生丸はに受け入れられたたった一人の存在であったのだ。
殺生丸:その者との婚姻の準備でもしてやれ・・・。
殺生丸は従者に冷静にその言葉を告げたのであった。殺生丸の言葉に従者はただ承知したのか戻っていく・・・。
殺生丸は従者の足音が遠ざかるに連れて過去のことを思い出して溜め息を僅かに吐いたのであった。
:ね、殺・・・ごめんなさい。本当にごめんなさい。忘れて、何もかも私と貴方との間のことも・・・。
その言葉はが寝込み、そして殺生丸の屋敷を訪れた満月の日の出来事であった。
その時の殺生丸はただ無理をさせすぎたと後悔をしたが、その結果既に後の祭りとなってしまっていた。
確かに殺生丸との間には一度子が出来た。けれど、は無理をしたのか流産してしまったのであった。
そして結果的にはお互いが別れ、婚姻すらなかったことにされたのはいうまでもないことだった。
そうの両親から丁重な断りがあったからである。それでも殺生丸にとっては忘れることはできなかった。
無論、に時折文を出していたのは内密なことだった。そのたびにから返事は来ていた。
それでも殺生丸にとってはこの手に、自分自身の元にが居て欲しかったのはいうまでもないことで・・・。
殺生丸はただ深い溜め息を吐きながら、その場で微かに告げたのであった・・・。
殺生丸:忘れてはおらぬというものを・・・。
その言葉を殺生丸は微かに告げた。邪見は殺生丸の言葉にただ我に返るばかりであった。
ただ主である殺生丸の様子をそっと伺っていた。微かに殺生丸の表情が不機嫌であったのはいうまでもない。
御母堂:殺生丸か、珍しく戻ってきたのか?
西国の城に、普段はいないはずの御母堂が目の前にいたのをその時殺生丸は驚きもしなかった。
むしろ、西国の城に今の時期にいて当たり前だということを十分承知していたからであった。
殺生丸:母上・・・話があります。
その言葉にただ御母堂は微かに溜め息を吐き、殺生丸を側に座らせたのであった。
殺生丸は背後の連れであるりんと邪見を微かに見つめ、邪見とりんは素直にその部屋を退席するのであった。
御母堂:のことを聞いてしまったのかえ・・・。
:可愛そうに、殺生丸そなただけには知られたくなかったのだろうにの・・・。
御母堂は自分の愛想のない息子をただその場で冷静に見つめ続けるだけであった。
無論、殺生丸は「くだらん・・・。」と告げるだけなのだが、そんな殺生丸に御母堂は微かに微笑し語った。
ご母堂:そなたら二人が別れてから、もう数百年は経つというのに・・・。
:して殺生丸、そなたはこの母に何を望みに来た。のことかえ・・・それとも他に何用か?
御母堂はただ息子の表情、殺生丸を見つめ微かに楽しんでいるのであった。
殺生丸は微かに溜め息を吐き、本題に入ったのである。が狐の嫁入りはなかったことにすることを・・・。
御母堂:それで、相思相愛である犬族のを狐の嫁入りにっか・・・中々考えたの殺生丸。
:だが、が哀れとは思わんのかえ、元々は身体が犬一族の中では貧弱それに求愛者は多くおった者を・・・。
:いや、正確には妖怪の中では身体が貧弱であったと伝えるべきかえ・・・哀れな運命よな・・・。
御母堂はただ殺生丸との過去の関係を知っている。故に殺生丸を咎めていたのであった。
は元々身体が貧弱、故に無理することも多少はあった。そう殺生丸の前では例え風邪であっても無理強いしていたのだ。
殺生丸:ならば、私が責任を取ると言えば宜しいか、母上・・・。
その言葉にただ御母堂は苦笑をした。殺生丸の表情を見れば察しがつくことであったのだから・・・。
そんな殺生丸に御母堂はただ「では狐の当主にはどのように話すのかえ・・・。」と冷静に伝えるしかなかったのであった。
殺生丸:事実を伝えるまで・・・私は逃げも隠れもしないのですから・・・。
それだけ殺生丸は母親に伝えるとその場を退室していったのであった。
ただ、ご母堂はそんな殺生丸を見つめ「ほんにのこととなると見境がないの・・・。」と呟いていたのはいうまでもない。
全ては御母堂様の考え通りに進んでいるなど、殺生丸とは知りもせずに・・・・。
御母堂はただ、自らの自室に飾ってある花嫁衣裳を思い出していた。過去に殺生丸がの為に用意した物である衣装を・・・。
御母堂:本当に、第三者から見ているだけでもどかしすぎる・・・。
微かに苦笑をしながら御母堂はその場から見える景色を見つめているのであった・・・。
これから先、息子がどう判断するのか御母堂にとっては期待したい所であったのだから・・・。
「主よ・・・あの妖狐の当主が直々に来ておいでなのですが・・・。」
御母堂の話を聞き終えた数刻後、従者の言葉に耳を傾けた殺生丸は「直ぐに行く・・・。」と告げたのであった。
その言葉に従者は頷き、その場を退室していったのはいうまでもない事であった。
りんと邪見は殺生丸のその堂々とした言葉にただ瞬きをしながら、待機させられている客室でただ様子を伺っているだけであった。
邪見はりんに顔を見合わせながら「こりゃ久々に西国に泊まることになるわな・・・。」などと告げていたのはいうまでもない。
殺生丸:そなたが今は当主か・・・。
妖狐の当主を見つめるなり殺生丸の最初の一言はそれであった・・・。
昔から顔馴染みの者であったのか、ただ殺生丸は溜め息を吐きたくなる思いであった。
:西国の当主でありながら留守の方が多いそなたに言われたくはない。
何処か微笑ましく、殺生丸を見つめながら妖狐の当主であるは微かに溜め息を吐いたのであった。
は微かに「妖狐は勢力を持ちすぎたと・・・」小言のように語っていたのはいうまでもなかった。
殺生丸:そなたがどうにか出来ぬのか、どのみち犬族に逆らえぬであろうが西国の中では・・・。
その言葉には微かに「違いない・・・。」と言葉を告げて苦笑をするのであった。
そんなの言葉に殺生丸は何故か、この者がを何故娶る気になったのかすら疑問を感じた。
:鈍いな・・・俺が何でに求愛したと思う?お前の為でもあるんだぜ?
微かに溜め息を吐きながら、は殺生丸の顔を見つめていたのであった。
そしてはただ「責任とれよ・・・妖狐の一族は俺がうまく纏め上げるからよ・・・。」などと告げているのである。
殺生丸:つまり最初からは娶るつもりはなかったっと・・・。
察しの早い殺生丸にはただ苦笑を漏らしながら「あぁ・・・」と告げたのであった。
最も、の両親はその気らしく流石にも僅かに焦り始めていたらしいのだが・・・・。
:あぁ・・・と相談したんだ。彼奴、お前の子一度流産してるんだろ・・・けどよそれでも構わないんだろ?
:でなきゃお前、のこと既に忘れてるもんな・・・。今まで振り向いて貰いたくて苦労したんだからよ・・・。
振り向いて欲しかった・・・。その真実はただ殺生丸の中に幾度もあった。
西国の歌姫、舞姫として病弱でありながらもは知られていた。そして幾度も求愛する者が多かった。
殺生丸も意を決して最初と語ったが、はただ「私まだ・・・そこまで考えてないわよ・・・。」などと告げられてしまった。
けれど、殺生丸はあきらめきれず何度もの屋敷を訪れては恋人の用に語り合っていた。
次第にの心は殺生丸にだけ真実を見せるようになっていたのは真実であった。
そのことをただ周りの殺生丸を知る者は少しずつ見守っていった。の心が殺生丸にしか開かないのを知って・・・。
:用件は簡単だ・・・娶れよ、俺は満月の日、と結ばれるからよ・・・。
:その為に御母堂様にお願いをして、妖狐の一族の当主、俺を巻き添えでこの計画立てたんだからな・・・。
その言葉に殺生丸はただ冷静な御母堂、自らの母上の会話を思い出し、微かに不機嫌になったのであった。
それからと母親の御母堂にしてやられたと、改めて知ってしまったのはいうまでもない事であった。
殺生丸:事実的にはお前の元にを狐の嫁入りさせる所だったのは事実であろう。
確認の為にただ殺生丸は再度の表情を伺い質問をしたのであった。
流石のも殺生丸がそこまで理解しているのだから、語っても平気だろうと微かに苦笑し語った。
:あ?まぁ俺じゃなくて弟の方な・・・気に入ってたからよ・・・。
:ま、お前が決断しなかったらだがよ・・・。それと、式の準備は内面的に進めているから決断しろよ速めにな・・・。
それだけ言うとは殺生丸から顔を背け、回廊の方へと歩き出し去っていったのであった。
そんなの言葉にただ殺生丸は溜め息を吐き、その場で先程の話に呆れ始めていたのはいうまでもないことであった。
それからの殺生丸の行動はとても早かった。実行に移すのは容易かったのだから無理はない。
御母堂はやっと決意を決めた息子の為に、式の準備はいち早く整えていたのだ。
無論、は微かに溜め息を吐きながらも殺生丸が望んでいたことは全て支えてやっていた。
ただ満月の日、とは結ばれる。の仕事は大幅に増えていたが、このさい仕方のない事であった。
満月の日は明日、その時西国の城を隅々まである人物を捜し求めていたはやっと見つけた張本人に溜め息を吐いた。
呆れたくもなったであったが、側に妖狐の当主がいるのに気づき、また溜め息を漏らしたのはいうまでもない。
:悪い・・・お前ら第三者から見てももどかしすぎるからよ・・・。
はそんなの言葉に「だからって、強硬手段取ることにないでしょ?」等と告げていたのはいうまでもない。
けれども、との話も中断され殺生丸の腕の中に収まったは微かに頬を朱に染めたのであった。
殺生丸:危うく私の元ではなく、狐の嫁入りされる所だったのだぞ・・・。
その言葉には殺生丸に顔を見られない用に頬を朱に染め、溜め息を吐き出したのはいうまでもないことであった。
そんなの表情を見つめながらは微かに苦笑をし、妖の酒を一口飲んだのであった。
:・・私にも頂戴よ・・・。
の突然のその言葉には飲んでいた妖の酒を零し、咳き込みながらの表情を伺ったのであった。
殺生丸もその言葉には正直瞬きをするばかり、がお強請りする時はいつも恥ずかしい時だからなのである。
殺生丸:駄目だ・・・その変わり・・・。
殺生丸の耳元で囁かれた言葉にはまた朱に染まるのであった・・・。
はただそんな二人を溜め息を吐きながら呆れていた。それから直ぐに、が甘えるようにに来たので苦笑をした。
次の日には静かに酒宴が行われたのはいうまでもないことであった・・・。
その場を参加していたりんも邪見も夫となる殺生丸もの舞に客も皆集中して見ていたのはいうまでもない事だった。
一通りの酒宴が終わり、皆それぞれの客室に戻っていった頃、殺生丸は微かに膝の上で眠っているを見つめたのであった。
体調が優れなかったのか酒宴の最中には殺生丸の肩に頭を預け眠ってしまったのだった。
:じゃ、俺ら一族の酒宴に戻るから・・・。
その言葉に殺生丸はただ微かに唖然としていたのであった。
は微かに苦笑をし、は微かに一族の酒宴のことに内心では呆れながら・・・。
殺生丸:まだやる予定か・・・。
妖狐の一族は祝い事があると、夜明けまで続く習慣があった・・・。
そのことをは十分承知していたが、微かに疲労もあったが溜め息を吐き告げた。
:仕方ないだろ・・・こっちは予定外で一緒に酒宴したんだからよ・・・。
:妖狐だけで酒宴する約束一族内でしちまったからな・・・。
それだけ伝えるとは微かにの寝顔を見つめ、と共にその場を去ったのであった。
そんなとを微かに見つめた後、殺生丸はの寝顔に満喫していたのはいうまでもないことであった。
殺生丸:あの言葉は偽りはないからな・・・。
の寝顔を見つめながら囁くように殺生丸はの耳元で呟いたのであった。
それから殺生丸はの唇に微かに口付けをし、まだ酔いがあるのか月を見ながらまた酒を飲むのであった。
それから殺生丸はまた西国を出たのであった・・・。
はそんな殺生丸を微かに見送るだけ、ただ定期的に戻ることを約束し、再び奈落を倒す為に殺生丸は旅に出た。
ただりんと邪見は殺生丸の後をまた同行していった・・・。
西国でのほんの幸せを過ごし、それでもまた殺生丸はの元へ戻って来ると約束をして・・・。
「この殺生丸からは二度と別れることは許さぬからな・・・」
その言葉はただにとっては忘れることの出来ない言葉だったのは真実だった・・・。
〜 Fin 〜
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Music Box/VAGRANCY 志方あきこ by:くれなゐ |