九尾狐HISTORY --Pumpkin's--





Pumpkin's
「ただいま〜!!」 「ん…?京、遅かっ……」 京の帰宅に読んでいた新聞から顔を上げると、テーブルの上にオレンジ色の楕円形の物体が3つ。流石にちょ っと重かったか、と楽しそうに笑っている。 「……かぼちゃ?」 いきなりカボチャを買ってこられても、庵にはよくわからない。京が何故楽しそうなのかも。まさかカボチャ が食べたかったから買ってきた訳ではないだろう。いくら育ち盛り(?)とはいえ、それならば3つもいらない と思うのだが…と見当違いのことを庵は考えていた。 「そ。通りかかった店で売ってたから買ってきちゃった♪」 「何故3つも…」 「3つセットで売ってたから」 「そもそも何故カボチャなんだ?」 「あ〜…お前そーいうの疎そうだからな。仕方ねぇ、ヒント出してやるよ」 庵より上に立てるのが嬉しいのか、胸を張って笑顔で答える。 「さて、今月は10月。中秋の名月は終わって次のイベント。31日。仮装パーティー。お菓子とイタズラ。  Trick or Treat!!」 極めつけとばかりに両手を広げ、大げさにリアクションしてみせる京。可愛い… 「・・・ハロウィンか」 「正解〜♪」 よくできました、とばかりに頭を撫でられる。京の機嫌がとってもいい。ハロウィンが近いからだろうか? だったらこのままでいてほしいのだが…今後のためにも。 「で、そのカボチャをどうするんだ?食うのか?」 「ハロウィンでカボチャって言ったら決まってるだろ?ジャック・オー・ランターンを作るんだよ。んで飾る」 「お前がか?」 京が自分から何かを作ろうとは珍しい。普段面倒臭いことは一切やらないというのに、何故このような子ども みたいな作業はやりたがるのだろう。やはり中身はまだ子どもらしい。そんなところも可愛いのだがな…… そんなことを考えていると思いも寄らない台詞が聞こえてきた。 「お前も作るんだよ」 「なに?」 「だって3個もあるんだし、もったいないじゃねぇか。二人で作って見せ合いっこしようぜ♪」 「…断る」 「何でだよ?楽しいぜ?」 「やってもいないのに何故わかる。俺はそんなイベントには興味はない。作るのなら一人でやるんだな」 「え〜?庵ィ〜一緒に作ろうぜぇ〜?二人でやれば絶対楽しいって、な?なっ??」 腕に巻きつき、媚びるような表情で上目遣いに見つめてくる。そんな顔も中々…… その顔に免じて付き合ってやってもいいんだが、もっと京を苛めてみたい欲求がどんどんと膨らむ。俺はその 欲求に忠実に行動することにした。 「くどいぞ。一人で作ればよかろう。やらんと言ったらやらん」 「庵……」 軽く腕を振り払い、冷たくそう言い放つと京は一瞬傷ついた今にも泣きそうな顔をして俯いてしまう。 そんな京にまた俺の加虐心が擽られる。本当に可愛いヤツだ。だが、これ以上やっては後々面倒なことになる。 この辺りで宥めなければ… 「きょ……」 「庵のバカッ!せっかく……せっかく庵と一緒に作ろうと思って買ってきたのに…!」 どうやら一歩遅かったようだ。目に涙を溜め、悲しみと怒りに赤くなった顔を上げる京。 ドキッとした。幼くも見えるが赤く潤むその瞳は艶を帯び、壮絶な色気を醸し出しており、目が離せなくなる。 こんな時に不謹慎な気もするが、理性と感情は別物だ。早く何かを言って京を宥めなければならないのに、何 も言うことが出来ずにただただ魅入ってしまう。 だが、時間は過ぎていくもの。京の表情に魅せられた庵を置いて時は過ぎる。京の感情は既に走り出しており、 止まってはくれないのだ。 「いいもんっ!紅丸んとこ行って作るもん!もう庵なんか知らない!!」 俺に背を向け、家を飛び出そうとする京にやっと現状を思い出す。慌てて追い掛けて腕を掴んで引き止める。 「京……!」 「何だよっ!庵なんて大っ嫌いだ!!」 嫌いという言葉を聞いた途端、身体が勝手に動いていた。京の腕を引っ張って強引に腕の中に引き込み、深く 強く抱き締める。 「痛ッ……離せよ、このっ…!」 「京……悪かった」 抱きすくめられ、暴れて脱出しようとしていた京の動きがピタッと止まる。何も言わず、動きもせずにじっと 言葉を待っている。俺は静かに言葉を紡ぐ。 「確かに最初は作る気はなかったが、最終的には付き合ってやってもいいと思ってはいた。だが、お前の顔を  見ている内に段々悪戯心が湧いてきてな。つい苛めてしまった…。最後にきちんと謝るつもりだったんだ。  泣かせてしまってすまなかった…」 京を抱き締める腕に力を篭める。黙って俺の心からの謝罪を聞いていた京はぽつりと一言。 「……このひねくれ者」 「………………」 「何だよそれ。お前のせいでこのズタズタに傷ついた俺の気持ちはどうしてくれる訳?このバカ庵」 「…すまない」 京はまだ俺の胸に顔を埋めたまま、上げようとしない。まだ怒ったいるのだろうか……? 「…俺をこんなにしといて謝るだけかよ。詫びとして一緒にジャック・オー・ランターン作れよな」 「京……」 顔を上げた京はまだ目が赤く痛々しいが笑ってみせる。どうやら許してもらえたらしい。 「返事は?」 「あぁ、分かった。…今日はカボチャ料理だな」 「あ、俺パンプキンスープ飲みたい!」 京が目をキラキラさせて此方を見ている。先程の様な泣き顔も可愛いが、やはり京には笑顔が一番似合う。 その笑顔を壊したくない、今はそう強く思う。京の笑顔につられるように口元が自然と笑みの形へと変わる。 「フッ…他にオーダーはあるか?今日はなんでも作ってやる」 「マジで!?んとな、魚がいい!あと、プリンとかデザート!」 「分かった分かった。後で買い物に行かんとな…」 「わぁ〜い♪庵大好き〜☆★」 その日、リビングの棚の上にはどこか憎めない顔のバランスの崩れたものと、まるで見本のようにとても綺麗 な顔つきのものと、二つのジャック・オー・ランターンが仲良く並んでおりましたとさ。

と、いう訳で(どんな訳だ)一日遅れのハロウィンです。
こ、こんなんでごめんなさい……何だか庵が弱いですよね;

その割には途中攻めっけを見せてくれましたけど。
二つ並んだジャック・オー・ランターン…

どちらがどっちを作ったのかは皆様の庵&京像にお任せします♪

後日、遊戯王・海城Ver.はこちら。よろしければそちらもよろしくお願いします。

By:巳薙様



素晴らしくハロウィンを想像させて頂きましたν
絶対自分で書いたらこんな作品書けないν羨ましいかも・・・

KOF、庵×京 面白かったですよ。
有り得ますよねこの展開・・・本当に素敵な作品をどうもです。

BY:嵐翠狐白 管理狐 七瀬 ネイ