あなたを想えば想うほど涙が出るよ
あのころは涙なんて出なかったのに
今は傍にいないあなたがこんなにも恋しくて
ああ、今日もまた夜がやってくる
今夜もあなたのベッドで、あなたの匂いに包まれて眠りにつけなたら
せめて夢の中では逢えるかな
Knight
「う〜〜・・・アスランのあほぅ・・・」
部屋の窓から夜空を眺めながら少女はつぶやいた
少女が名前を呼んだ少年は、今はまだ仕事中なのだろうか
ここ最近彼は残業続きで帰りは深夜である
はせめて彼が帰るまで待っていようと思うのだが眠気には勝てず
すれ違いの毎日が続いていた
「アスラン今日も遅いのかなぁ」
帰りは遅いけれど、朝目を覚ませば必ず彼は隣で眠ってくれている
まるで包み込むようにあたしの体を抱きしめながら
少女は振り返ってキッチンの方を見た
・・・・・・今日はせっかくの記念日なのにな
そう、今日は が帰りを待つ少年――アスランがこの世に誕生した日
もしかしたら早く帰ってくるかもしれないと、淡い期待を抱いてケーキを焼いた
彼は甘いものがあまり得意ではないからもちろん甘さも控えめで
本当は一番におめでとうを言いたかったのだが、夜にとっておこうと決めたのだ
やっぱり今日も遅いのかな・・・
外を眺めていても一向に彼が帰る気配がない
は諦めてソファに腰を下ろした
彼のいない家は本当に静かで
いや、彼は元々無口なほうだから基本的に私たちの家は静かなんだけど
けれど彼がそこにいるだけで暖かかった
だから今彼のいないこの家はさらに寂しく感じて
夜であるせいでもあるだろう
夜は嫌い
いろいろと悲しいことを思い出してしまうから
は壁にかかっている時計を見た
まもなく12時を刻もうとしている
アスランの誕生日が終わっちゃう・・・・・・
本当は一番におめでとうって言いたかったのに
彼のことだから自分の誕生日とか忘れてそうだな
ケーキを食べて、プレゼントを渡して、それから・・・
「・・・っ・・・・ふぇ・・・」
は膝に額を当てて泣いた
「アスラン・・・・・・」
ちょうど時計の長針が11のところを指したときだった
ガチャガチャと激しい音をたてて扉が開いたと思えばドタドタとものすごい勢いで足音がして
が驚いて振り返ると、そこには息を切らしたアスランがいた
もともと白い顔は赤くなっており、汗もかいていた
季節はもうすぐ冬だというのに・・・
「へ・・・・・・アスラン・・・・・・?」
あまりの驚きで涙を拭くことすら忘れていた
「ただいま・・・・ごめん、 」
アスランはそのまま の体を抱きしめた
「ど、して・・・」
しばらくの間、アスランは を強く抱き締めたままだった
「アスラン・・・・・?」
が未だ驚いてそう言うと、アスランは腕を放して困った風に言った
「カガリが・・・・」
つい先ほど、いつものようにアスランが残業をこなしていたときだった
『なんだお前、まだ帰ってなかったのか?』
『ああ、これだけでも終わらせようと思って・・・・・』
そういうとカガリは呆れたように頭を抱えて
『お前、今日が何の日か、分かってるか?』
『今日・・・何かあったか?』
『はぁ・・・アスラン、お前 におめでとうも言わせない気か?今日はお前の誕生日だろう?』
『・・・・・・っ!あ・・・・・』
『いいから早く帰れ!これ以上アイツを悲しませたら、お前、クビにするからな!』
呆れたようで、けれどどこか本気な意思を感じ取ったアスランは、 のためにも急いで家路についたのだ
「・・・・・・というわけで・・・・・・ごめん」
アスランは再び を抱きしめた
「いいよ、おめでとう、アスラン。」
もそう言って彼の背中に腕をまわした
「ぎりぎりだったね」
「ああ、間に合わなかったらきっと後悔してた」
アスランは に触れるだけの口付けを贈る
もくすぐったそうにしながらも微笑んだ
「明日は休みなんだ・・・今日の分も一緒にいるから」
その言葉に ははにかんだように微笑んで、またアスランに抱きついた
「ケーキつくったんだ。・・・食べる?」
「うーん・・・ケーキも食べたいけど、今はこっちの方が食べたい」
そう言ってアスランはにっこりと笑った・・・それも、女の子を悩殺しそうな勢いで
もちろん も例外ではなくその顔を真っ赤にさせる
そんな を面白そうに眺めながらも、アスランはすぐに行動に移した
ソファに座っている彼女をそのまま横抱きにして抱える・・・つまりはお姫様抱っこ
「ア・・・アスラン、急になにする・・・・・!?」
顔を真っ赤にしながら抵抗しようとする少女にアスランは気にする風もなく
「だから、今は が食べたい」
「・・・・・・・・・っ!!」
普通の顔でさらりとそんなこと言うな!!
はこのままでは彼の思い通りになってしまうと足をジタバタとさせるが
彼がそれを許してくれるはずもない
「・・・・・・ は俺に抱かれるの、そんなに嫌か?」
アスランが悲しそうにそう言うもんだから、 はうっ、となる
「い、嫌じゃないけど・・・・」
恥ずかしいじゃない・・・・ の思いとは裏腹に、アスランは嬉しそうに笑った
「ほら、まだプレゼントもらってないし?」
「プ、プレゼントならちゃんと用意して・・・・・・」
「それに、俺が今一番欲しいのは だ」
「・・・・・・・・・・バカ」
だから、さらりとそんなことを言われると、本当に心臓に悪い
ああ、これ以上の抵抗も無意味だろうな・・・
それに・・・・・・
静かになったのを了承の合図だと悟ったアスランはそのまま を抱えて寝室のある2階を目指す
も大人しくしてされるがままになっていた
それに気付いたアスランは彼女に耳元に顔を近付けた
「ご無沙汰だから・・・・・・緊張してる?」
「・・・・・・っ!?な、なな、何言って・・・・」
いきなりのことで は顔を真っ赤にさせた
アスランの息が耳にかかって、 を火照らせる
「大丈夫」
「!?」
「いつもよりずっと気持ちよくしてやるから」
「!!」
夜はまだまだ始まったばかりみたいです
夜は嫌いだけど・・・・・・でもね、
あなたと過ごす夜は嫌いじゃないから
今夜もどうか、夢でもあなたに会えますように・・・・・・
Happy Birthday、アスラン・・・・
(c)popo
|