SLOW MOTION
それなりの成績は維持してるし、男女問わずにそれなりに友達もいる、
何の変哲もないフツーの学校生活。
俺の平坦で平凡だった生活を、一気に鮮やかに彩ったのは、
たった一人のクラスメイト。
目の前の廊下を、両手にたくさんのプリントを抱えて歩いて行く
彼女に気付いて、俺は何時ものように声をかけた。
「。」
「あ、シン君。どうかしたの?」
「その大量のプリント、何?」
「教務室に用事があって行ったら、ついでに教室へ持ってってくれって
頼まれてね。」
「ふーん・・・。」
適当に相槌を打った後、俺は両腕に抱えていたプリントを半分以上
取り上げてやる。
「シン君?」
「声掛けたのに何もしないの、気分悪いからな。」
「でも、頼まれたのは私だし・・・。」
「俺が勝手にやってる事だから、気にすんな。」
そう言って、俺は立ち止まったままのを置いて、先に歩く。
普段、普通の友達相手になら、絶対にこんな事はしないのに、
コイツがいると、何時も俺のカラダが勝手に動いている。
胸の奥に小さな炎が燃えてるかの様で、全身が心臓になったんじゃ
ないかって思うくらい、何所も彼処もドキドキしてる。
小さい頃、学校の隣の席に座った女の子にしてた意識に
似てるとは思うけど、それとは違う。
こんな事考えるのは、ちょっと恥ずかしかったりするけど、
これはきっと運命の出会いと、そう信じているのは、俺だけなのか?
まさかそんな、ねぇ・・・。
「いつもありがとう、シン君。」
駆け寄って来て隣に並ぶなり、そう言いながら見せる笑顔。
スローモーションの様に笑うを見る度、俺はまた彼女に恋をする。
「何か私、いつもシン君に助けられてるよね。」
「・・・そんな事ないし。」
「シン君がそう思わなくても、私はそう思うの。」
限られた時間の中で、と一緒に過ごす時間は、不思議とゆっくりと
流れてくような気がする。
・・・楽しい事や嬉しい事って、普通なら早く過ぎるはずなのに。
既に放下を迎えて暫く経つ教室には、人っ子一人居らず、遠くから
聞こえる部活に精を出す声が聞こえる位に静か。
「ホントに助かったよ。正直、腕キツかったんだ。」
「別に礼を言われるほどのモンじゃないし。」
「ううん。すごく助かったよ。」
教卓の上にプリントを置けば、彼女と一緒に過ごす時間が終わってしまう。
それに少しの寂しさを感じてしまうのは、俺達の関係が友達という
枠組みでしかないから。
そして、コイツはまだ、俺の胸にある小さな炎に気付かない。
もうそろそろ、俺は胸の奥から込みあがってくる想いは、俺の意思に
関係なく、止まる事をしようとしない。
何時か彼女を抱き寄せて、ゆっくりと流れてく穏やかな空気に抱かれ、
ずっとこの胸をくすぐる様な、その笑顔に触れていきたい。
「シン君?」
叶うかどうかなんて分からないけど、叶えたいと思うなら、
今の友達という関係を打破するしかない。
・・・・・・その為には・・・・・・
「あの、さ・・・。」
「ん?」
胸に抱くこの想いを
「・・・・・俺、さ・・・その・・・・・」
「何?」
打ち明けよう、キミに・・・
「初めて見た時から・・・ずっと好きだったんだ・・・・・・」
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