溜め息が漏れているロイは、ただある品物を見つめていた。
ずっと前に彼女に渡しそびれた品物。そして、永遠に渡らなくなった品物。
ロイ:君に似ているというだけで、心が揺れるとは・・・。
ロイはずっと考え込んでいた。何も出来ないのは今の自分ではなく過去なのだと・・・。
司令室の扉を叩く音が耳元に聞こえる。ただロイは一言だけ告げた。その人物は素直に入る。
ロイ:鋼の・・・。
エドワードは扉を開けて、直ぐに壁に寄りかかった。
ただ扉は開けっ放しで、瞳を閉じて冷静に何かを思っているのか語りだした。
エドワード:良いのか・・・。本当にそれで良いのか・・・。
ずっとエドワードはロイの態度に不振を抱いていた。それは過去を知っているからであって・・・。
ロイはロイでそれを見つめ続けている。何故か、本当にそれで良いのかと思うように・・・。
ロイ:何の事か分からないね・・・。
今は気持ちを整理させたかった。私の心は揺らいでいたから・・・。
そんな態度を知っているのか、エドワードは私に真剣な眼差しで向けて語った。
エドワード:似て居るんだろ・・・彼奴に、・に・・・。
その事実を知っているのは私の部下とエルリック兄弟だけだった。
私は何故か、気持ちが揺らいでいて鋼のにまで知られていた。何かを悟ったように・・・。
未だ嘗てから持ち続けている彼女の銀時計とピアス・・・女々しいと想いながらも大切にしていた。
彼女が使っていた錬金術は水・・・。けれども、あの頃の私は未だに彼女が尊く見える何て想いもしなかった。
第四章 君の面影
エドワード:大佐、これ以上・・・彼奴の事を想うのはやめろよ・・・例え似ていても・・・。
意を決した鋼の言葉、確かに想い続けていた。彼女が失われる切っ掛けは我々にあったのだから・・・。
あの時の私は君をからかう事ばかりをしていた。そんな彼女は私を暖かく見守るだけであって・・・。
エドワード:彼奴が死ななきゃならなかったのは・・・俺達の責任なんだからよ・・・。
私にとっても君にとってもその言葉は重荷だった。
何故、あの時守れなかったのかと思ってしまうような責任なのだから・・・。
アルフォンス:兄さん・・・。
その声は指令室内だけではなく、廊下にも響き渡っていた。
ネイが亡くなったのも二ヶ月前、そして異世界から彼女が現れたのも今・・・。
正直、最初に見つめた瞬間に似ていると想った。何故か似ていると・・・。
だから守りたいと想った。あの後、冷静になっていても何度も考えてしまっていた。
エドワード:二ヶ月前・・・俺達を庇って彼奴は死んだ・・・。結局守られて・・・。
それぞれに、彼女が背負った傷を慰める者などいなかった。それぞれが、前に進むしかなかった。
あの事件は彼女の犠牲で全て解決がなされて、彼女は殉職で二階級特進、少将の地位となった。
ロイ:それは彼女の意志だ・・・あの事件さえなければ・・・彼女は死なずにすんだ。
守りきれずにいた。その悔しさだけがあって、だから彼女が守ってきたものを守りたいと想った。
けれども突然の来訪者で私は、その決意すら揺らいでしまったよ・・・。
エドワード:だから、それは俺達の責任なんだよ・・・。
俺は今、自分で何を言っているのか分かっている。彼奴は俺を守って死んだ。
それだけじゃない事も・・・そして俺は、未だに彼奴の思いを大佐に告げていない。
「ロイに伝えて・・・道を間違えないで、前に進んでって・・・ロイに会えたから今の私があるんだよって・・・。」
悔しい言葉だった。あの事件は全て俺達にとっては嫌な思い出だった。
彼奴は俺をどう想ってたのかは分からない。でも守りたいと想ったすくなからず・・・。
ロイ:それを・・彼女の意志を無駄にしない為に私は上を目指す・・・。
その後、会話は突然途絶えた。それは互いに過去を振り返ったせいでもあった。
後から中尉がこの司令室に訪れて、何も語ろうとはしなかった。そして数分がたった頃・・・。
リザ:まだ、気にしているのですね・・・あの事件の事を・・・。
そんなエドワードとロイの言葉にホークアイ中尉は悲哀の言葉を継げた。
あの時の傷は皆、軍部の者は背負い続けていた。ハボック達もその場でただ唖然と見ている。
ハボック:大将・・・。そんな顔・・。
慰めの言葉はエドワードにとっては虚しいだけである。
けれども、ロイはエドワードを止める資格はない。あの時・・同じ場所で知ってしまったのだから・・。
エドワード:悪い・・用あるから俺、ホテル戻るは・・・。
エドワードが去った後、ロイは机を叩いた。
その光景を部下は静かに認めていた。あの時の傷は総統に重荷なのだ。
ロイ:忘れるはずもない・・・軍が保管していたものを持ち出したテロの事件の事は・・・
あの時、誰もが軍内部に不穏な動きを持つテロが潜んでいるとは想っていなかった。
けれども彼女は直ぐにそれに気が付いて、対策を影で行っていた。
だがその最中に、鋼のと私を巻き込んでまでもの動きがあった。
それは彼女も予想していない事であって、その時悪用された毒物や拳銃があった。
ロイ:我々を逃す前に、自分の身を保障しろとあの時は想った。
其処は子ども達が廃墟の中で遊び場にしていた所であって、子供達を直ぐに逃がしてから彼女は来た。
けれども、テロリストもいる事を知らずに、彼女の右肩に打たれた弾は通過したけれども・・・。
「遅かったな・・・お前が取り調べる前に俺等が行動を起こして・・・」
その時の彼女は、凛々しく見えて私に頼み事をした後から彼女は行くと約束をした。
でもそれが間違いだった。その時、気絶させていたはずのテロリストの一味は彼女に向かって毒針を使用した。
彼女はそれに築いていたが、何もない素振りを我々の前で見せていた。
それでもまだテロリストは過半数いて、その場で我々は錬金術で応戦をしていた。
けれども鋼のを庇った時、彼女は何故かその場に倒れ込んで、後々には手遅れだった。
リザ:今を見つめなければ何も意味はありません・・・大佐・・・。
全て、あの時、彼女、が残した気持ちを無駄にする訳にはいかなかった。
全ての完結をロイがこの手で迎え、そして自身を埋葬した。本来なら、中央に眠るはずの彼女を・・。
そうそれは、身内の立っての臨みなのだ・・。
彼女ネイの意志である臨み・・・。愛しき人の側に居たいという臨み・・・。
ロイ:それもそうだな・・・。
あの時の事件はあの時で終わっていたと想った。けれどもその指導者は未だに不明。
指導者はテロリストの中でも余り姿を現さないと言われていた。そしてその事件はそのままだった。
それから数分もたたないうちに慌ただしい足音が響き渡った。
ロイは扉を開けた人物を見つめた。それはフェリー曹長であって、ただ急いで来たのかと思われる。
フェリー:大佐・・・がいません・・・先程から・・・。
その時、私は頭の中で彼女との記憶を連想してしまった。ただ怒りに我を忘れてその場に立ち上がった。
皆がを心配し始めていた。先程からの様子など気にしていなかった私は愚かだと思った。
貴方達がそんな会話をしている頃、私は一人途方にくれていた・・・。
そう何故か東方司令部には居られないと思った。そして私はこれからこの世界で何をするのか・・・。
:私は・・・何を望んでるんだろ・・。
溜め息ばかりが漏れる。私が知っていると知ったら貴方達が仲の良いことだけ・・・。
心に背負った傷など私は何も知らないから・・・。
「お嬢さん、こんな所で何してるの・・・。」
何もしてはいない・・・。でも今の私を知るのは自分だけ・・・。
何故か自分を守る武器は今は何もないのに、彼は微笑んでる。殺戮を楽しむ瞳。
「ねぇ〜お嬢さん、どうして生きてるのかな・・・・・・。」
身体は震えているのに何も出来はしなかった。
その彼は微笑んでいる、そうエンヴィーは・・・そして何故か誰かを憎んでもいるような・・・。
:それは・・・誰のことなのかしらね・・・。
そんな言葉が出た時、ただ私はこの世界には必要のない存在何だと自覚してしまう。
なのに、私はここから一歩も引くことを許されない。けして逃げる事も・・・。
エンヴィー:お前、扉を開けただろ・・・。
扉、その言葉は分からない。でも何故か私は彼の言ってる意味に惹かれて・・・。
それでも私は何も知らなかった。この世界が余りにも似すぎている事に・・・。
エンヴィー:お前、何者な訳・・・お父様が気にする程の・・・。
私は貴方の事を知らない。例え、姿形は知っていたとしても・・・。
そして質問してくる彼に私は白を切る・・・。
:さぁ〜貴方なら何かをご存知なのでは・・・
何も今は、全てに関して鑑賞を行いたくなかった。
この世界は私の全てを知らない。けれども同一人物が居る・・・そして心も似ているから・・・。
エンヴィー:まぁ〜どの道ここで始末しろとの命令だからね・・・バイバイ、お嬢さん・・・。
何もするつもりはない。此処では私は必要ないから・・・。
何も抵抗するつもりはない。だけれども、生きている。私は何も存在価値がないのに・・・。
エンヴィーは手を鋭い刃に変えると私にその刃を向けてきた。
そして何故か驚いた事に、私は一度その顔を知っている。貴方は誰と思ってしまう。
:・・・っは・・・貴方は、どうして・・・
そして私は貴方達が何を臨んでいるのか、心の中で悟ってしまう。
体が震える・・その場に膝を折ってまで・・・私は震えを抑える事が出来なかった。
エンヴィー:・・・・おい・・・。
何故か何時も思ってしまう。そして何故かこんなときに心を読まなくてもと思ってしまう。
何よりも全てが全て狂ってしまうくらいに・・・。
:探しているの・・・エドと同じ・・・賢者の石を・・・。
彼らは探している・・その物を・・・。
そして私は何よりその存在を知っている・・・でも、この世界にとっては・・・。
エンヴィー:さぁ〜ね・・・でもお前にも関係ある事なんだ・・・まんざらね・・。
でもその後の事は何も思い出せない。ただその時、私はまだ聞こえた「生かしといてあげる・・・」と・・・。
そして私は全てを無関係に出来なくなってしまった・・・賢者の石に纏わる事を・・・。
そして、貴方は私に牙をむいた・・・。でも、本当はそれで良かったのに・・・。
この世界には私にとって必要ない・・・彼らの事に鑑賞してはならないのだから・・・。
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Music Box/VAGRANCY By:渇きの丘 |