私はその場で足を止めた。それは後ろから付いてくる人物が居たからだった。
安堵の溜め息を漏らしたかった。この気配は私達の中では知っている。
ただの忍びとしか思えない程の気配なのだからだ・・・。
私はただ釈然としない中で、後ろを振り向いた。そうその人物が多分私の知っている人。
:殺されたいのかしらロイ・・。
私は彼に瞳を見つめる。それを察したのかロイは姿を表に出した。
私はロイが誰を捜し求めているのか、それを察したような感じが知ってしまった。
ロイ:・・やっと見つけた・・。
もう私はあの頃に戻れないのよ・・そう私は心の中で察しながらロイとの会話をする。
それが私の心を痛めつけているのに・・・何より辛かった。
:二度と貴方に会うはずはないと思っていたのは私の勘違いね・・。
何処かで私は怯えていた。こうなる結末を・・・私が闇の中で消えた理由を彼は知らないから・・・。
それでも私をまだとどめられる事だとロイは思っているのかも知れない。
第二章 祖は祝福を持つ者
:今回のターゲットの報酬・・貴方に譲るわ・・。
そう私は知り合いとはもう二度と仕事はしないと決めているのだから・・・。
それでも貴方は私を引き止めようとするのね・・その力強い腕は、誰を守る為にあるのかしら・・。
ロイ:、君はこの仕事から身を引くべきだ・・俺が探した理由は全て・・。
私は貴方の腕から離れる。そして懐かしい幼馴染の顔と向き合った。
昔と違って、貴方は何もかもが変わらなかった。どうして私を探すの・・・。
:私の何が分かるのかしら・・私は貴方と違って感情を表に出さない人間よ・・・。
お願いだから・・・お願いだからもう二度と私の前から現れないで・・・。
もうこの東方に私の居場所はないのかしら・・何度、別の場所に移動しても貴方は私を探し当ててしまうのに・・・。
:祖は古よりの定めの名・・。貴方は本当に誰なのかしら・・。
仕事に支障が出ないように、私は次の任務に取り掛かろうとしている。
残りのターゲットを殺めれば、今回の任務は全て終了となる。だから私は感情を表に出さない。
それは貴方の前だけの強気なような気持ちだった。
泣いている私の心は貴方にしか素直を見せようとはしなかった。
ロイ:ヒューズ・・の過去を洗いざらい教えろ・・。
そうロイが話しているのは幼馴染の親友だった。本来なら親友は三人だったはずなのに・・・。
電話越しの受話器からその会話は腹立たしいものにも見えたのだった。
ヒューズ:お前・・まだ諦めてないのか・・・。
:俺は彼奴の過去に触れないってもう彼奴に約束しちまったんだから・・。
ロイの言葉を聴きながらヒューズは思っていた。
そして、の過去を調べるなら自分で探し出せとも思っていた。
ヒューズが調べた時、まだ半人前だった情報収集が酷く憎く感じた。
がロイやヒューズの前から消えた理由は、ただ簡単な事じゃなかったからだ。
ロイ:なら何故隠そうとする・・。
その受話器の声が怒りに満ち溢れているのが分かる。
ヒューズは今回の情報でとまた再開出来たのかという事を理解したのだった。
ヒューズ:お前な・・俺らが裏に職付けた時、を探そうとした時・・
:彼奴が一時的に俺らの事を止めようとしたんだろ・・その理由を分かってないのかよ・・。
それでもその仕事がやめられなくなってしまって、結局はこの仕事を続けている。
そして何時かと共に、また普通の日常に戻れるものだと信じたいからだ。
ロイ:そんなの俺に関係ない・・俺はが何をしようが俺はを取り戻す・・それだけだ・・。
その覚悟は変わらないのだとヒューズは正直いって思った。
ロイが覚悟を決めた事を止める事は絶対にしないからだ・・・その覚悟にはもう迷いはない。
ヒューズ:しゃぁ〜ねぇ〜な・・自分で探せや・・ロイ・・。
:は俺の情報網を先回りしちまってやがって答えられないんだわ・・。
そう言って受話器を置くのも何時もの習慣となっていた。
その度に溜め息が漏れている事も、正直ロイは知らないだろう・・・。
ヒューズ:お前が取り戻せる程の理由じゃないんだよ・・彼奴が俺らの前から消えた理由は・・。
探し出した答えにヒューズは最初戸惑いを隠せなかった。
そしてロイに黙ってにあった時、はヒューズにロイに黙っているように言った。
それを言ったら、今までのように全てが狂ってしまうからと・・・。
だからロイが自ら真実を見出すまで、ヒューズに黙っているようにと・・。
ロイ:一体何があったんだ・・もヒューズも黙って・・。
ロイも半場怒り気味の感情に冷静差を取り戻したのだった。
ターゲットが動き出したからだった。はまだ行動をしていないのか・・・ロイは仕事に集中するしかなかった。
馬鹿・・私の心は何度もその言葉を脳裏に焼きつかせた・・。
ロイの行動は明らかに冷静ではない。そして何よりターゲットに知られすぎている。
:動きたくはないのよね・・歌姫の顔をした後は・・。
そう言いながらも私は髪飾りから針を出す。隠し持っていた武器を・・。
本来なら私は何を使用するのかは知られていない。だから、到って私の情報入手は困難なのだ。
そして何より、依頼主もそれを信用し、利用するのが仕事のうち・・。
ロイの今の冷静さよりは余程よいと思ってしまった自分がいた。
:っふ・・チェックメイト・・・。
私の言葉を知ったのか、ターゲットは身体を震わせた。
闇の中では全て声や息だけが頼り、そして私は目の前にいる者を殺めるだけ・・。
:また汚らわしい者を殺めてしまったは・・っふ・・祖は古よりの定めの名・・。
それでも何処かで人を殺める事を私は拒んでいた。
どうしてだろう・・・何故なのだろうか。全てが私には分からなかった。
:さて・・彼を探さないとやばいかしらね・・。
ロイを探すのは心の中でも嫌いじゃない。だけど、私が嫌いなのは自分の心。
それでも何処かで今を私は憎んでいるように思えた・・。そう遠い何処かで・・・。
ロイ:・・どうしたのかな・・。
相変わらず紳士ぶっている幼馴染を見ながら私は仁王立ちをしていた。
ロイの微笑みは、確かに今の状況では似つかわしくない。
:貴方が逃したからよ・・・無能・・。
流石に私の表情は怒りで満ちているだろう・・・。
今日の依頼で貴方が望まない確信は希だと思ったのだから仕方がない。
マースにもう少し裏の手を使って話しておくべきだったかしら・・・。
これ以上、私を探し出そうとすれば私を配下にしているルシファが許さない事ぐらい・・。
それ以上に私が何故裏で暗殺行をしているのか・・・もう少し考えて欲しいぐらいだわ・・・。
私は溜め息を付くしかなかった。依頼は終了したし、金は通達で組織に送られてくる。
つまりは依頼終了で、此処に暗殺者は用済み。ターゲットはそのまま行方不明になるか死亡届。
組織の遣り取りは長年知っているからこの先の事も黙認するだけ・・・。
:はぁ〜無能、分かったわよ・・明日、会うわよ・・
ロイ:場所は・・・。
相変わらず気障だぁ〜。何でコイツと幼馴染になっちゃった運命なの!?
ロイは私を見つけると何時もこう逃そうとしないし、一日付き合えばそれでチャラ・・・。
こんな幼馴染がしつこい所望は何な訳よ・・・ν
仕方なしに私は溜め息を漏らしながらロイを見つめている。そして・・・。
:場所は貴方の自宅のポスト見れば分かるわ・・それ以上は言いません・・。
そう言って私はその場を去っていった。
理由は簡単だった。そしてロイと分かれて、闇の中で一人の気配を探る。
:何故、隠れているのかしら・・エロス。
笑い声が微かに聞こえる。私は背後を見つめながら答えた。
でも、私はつくづく思った事がある。エロスは苦手だ・・・私の対だと教えられても信用出来ない。
エロス:祖は祝福を持つ者・・私と貴方で一人前・・依頼はお疲れ様・・。
:次の依頼は後日貴方の元に送られるわ・・・。
:そう・・・その時はその依頼断るかもですよ・・
そんな言葉をまじわし私は闇の中に身を隠した。
エロスは気づいている。そうロイの事を・・情報を探られるのは時間の問題ね・・。
私は焦る事しか出来なかった。何故なら・・狙った獲物は消して逃さない。
それが私の組織での暗黙の了承。幾人ものターゲットは命を落としたのだから・・・・。
エロス:答えはYESね・・。貴方は断れないのよ・・。
:貴方の成長をあの方は望んでいるから・・そして邪魔者は消えて貰わないとならないわね・・。
が去った後に、エロスはそう呟いた。まるで何かを知っているように・・。
その笑みは邪悪だった。人を殺す事を厭わないその顔が其処にはあった。
エロス:何れ貴方には消えて貰うは・・焔の錬金術師、そして鋼の錬金術師も・・・。
その問いが意味する言葉は何れ分かる事だろう・・・。
全ての始まりは此処からに過ぎないのだから・・・・・・・・。
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Music Box/FINAL STAGE by:砂塵の行方 |