私は隣を歩く彼を見上げて
頬が笑みの形を作るのを止められない。こんな些細なことが幸せでうれしかった。
ずっと一緒にいようね
付き合い始めたのはほんの数ヶ月前。
同じ学校の同じクラス。席は奇跡的に隣。
教科書を見せたりしているうちに、以外といい人だということが分かった。
城之内いわく「いけすかねーヤロウ」らしい。たしかに、
「凡骨め!」
「なんだとぉ!?」
などというやり取りがよく目撃される。だけど、彼は以外と優しい。
帰り道私に合わせて歩きにしてくれたり
家の前まで送ってくれたり
もちろん歩くときは自分が車道側を歩くし…口は悪いけど照れ屋で可愛い一面もあるし♪
「先ほどから何をしまりのない顔をしている」
「あ…気がついた?」
「そんな顔でこちらをじっと見られてはな…なにかあったのか?」
さりげなくこんな風に気遣ってくれるし…
「なんでもないよ…ただ…」
「ただ?」
「しあわせだなぁって」
にっこり笑ってそういえば彼もふんわりと微笑を返してくれた。
こんな表情初めてみた…その微笑で自分の顔の温度が急上昇したのが分かった。
「どうした?顔が紅いが…」
「な、なんでもないよ!!」
くるりと瀬人に背を向ける。
少しでも早く頬の熱が冷めるようにと
両手を頬に当てて目をぎゅっと瞑った。
「幸せ…というのならオレも幸せだ…」
その意外な言葉に振り向けば
彼の顔はほんのりと蒸気している
片手を口元に持っていき、表情を隠すように…
「お前と会ってからこの世界の見方が変わった…こんな道…お前と会わなければ歩くこともなかっただろう」
私は瀬人の手をそっと取った。
「私もだよ…この道も…瀬人と歩くから違って見える…他の景色も…瀬人と一緒ならきれいな景色はもっと綺麗に見えるよ…」
恥ずかしいから少しだけうつむいて話す。
瀬人が私を見ているのがよく分かる。
「」
名前を呼ばれて握っていた手を軽く引っ張られる。それは結果として瀬人の胸の中に倒れこむ形となった。
ぽすんと軽い音を立てて私は瀬人に抱きしめられた。
「 …愛してる…早くオレの元へ来い」
「瀬人…私はもう瀬人のところにいるよ?」
顔を上げれば強い光を宿した真剣な目とぶつかった。
少し体を離されてはっきりとお互いを見る。
「オレの…妻になれということだ」
少しだけ不適に笑いながら彼は私に言った。胸がどきどきしてとまらない。
先ほどからずっと苦しいのに
その言葉にもっともっと胸が苦しくなる
…鼓動が激しくなる
「私は…私は…」
緊張して声がうまく出ない
言葉が紡げない。
「いやか…?」
「いやじゃないの…ただ…うれしくて…緊張して…うまく…しゃべれないの…」
「 …」
彼がそっと抱きしめてくれる。私は彼の耳元で言葉を紡ぐ。
「私も…瀬人のこと愛してる…だから…私を…貴方のお嫁さんにして…」
それは愛の言葉。
彼が笑ったのが気配で分かる。
「ああ、もちろんだ。世界で一番綺麗な花嫁に、世界で一番幸せな花嫁にしてやる。」
その言葉で涙があふれてきてとまらない。
彼の背中をぎゅっと抱きしめて嗚咽をこらえる。瀬人もぎゅっと抱きしめ返してくれた。
「ずっと一緒にいようね…」
涙に震えた言葉は甘く切なくて
瀬人は体を離して私の額と自分の額を合わせて誓った。
「ああ、約束だ」
返された言葉も甘く切なかった。幸せな時間がまた増えた。
〜 END 〜
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