第一節 継承の礎
葉の一滴一滴の雫・・。
ただそれは静かに森に微かに響く和音。
小枝が砕かれる音・・。
足跡が一つまた一つと近づく・・。
下り坂になる・・。
赤い髪が風に靡く、微かな微笑みと共に・・。
町の風景が森から見える・・。鳥達の鳴き声は森に響き渡る。
「帰って来たよ・・君の為に・・」
その場が静かに流れゆく・・。
それは一瞬の出来事・・。
水晶に移る彼の姿・・。
何もないようにその場は静かに流れゆく・・。
蒼い髪、右目の緑の瞳が哀しみに見える・・。
左目には銀の瞳・・けれど左目は何も見せない・・。
水晶に移るその光景は何故か歯車の和音。
一滴の涙・・。
運命が動き出す・・。
汝等の秘宝、汝等の罪においてうち砕かれ・・
されどその罪も汝等が背負う・・古より受け継がれる・・
古より受け継がれし名を・・白き三珠を守るもの・・
「お願い・・探しだして早く・・」
一滴の涙からは何もとらわれず・・。
その神々しい美しさからは弱々しい声・・。歯車の定め・・。
「クルル・・クル・・」
金色の淡い瞳・・夢の中・・。
誰かを呼ぶ声・・。
彼女は瞳を開ける・・。
寝床に横たわる彼女からは汗が溢れる・・。
黒い髪が美しく市民からも愛されていた彼女・・名は梅流〔める〕。
いつもの用にその夢から梅流は現実を戻される・・。
分からぬ現実と真実・・。
妙にそれが疑問となる・・。
梅流:何だろう・・ずっと誰かが読んでいる・・。
寝床から起きあがり身支度をし始める・・。
いつもの用にいつもの生活が始まりを告げる・・。
ずっと気に懸けている夢など気にせず・・。
けれど夢の中の彼女には全てを知っていた・・。
それでも涙は流せずには居られない・・。
星々の錬成・・転生は2人が決めた未来。
その記憶・過去は存在しない・・過ちも・・。
近いあった約束も何も忘れて・・。
それがどんな結末であっても・・。
梅流:おはよう・・
その挨拶が部屋に響き渡る・・。
写真に写る・・幼い赤い髪の少年に・・。
|