第ニ節 罪人の来訪
そこには廃墟としか思えぬ神殿。
雨の滴る雫は神殿の地下に物音として響き渡る・・。
水晶の暗示は何を意味しているのか・・。
彼女は何も知らない・・。
両手・両足の十字架の傷が痛む・・。
それが生きる意味を彼女にもたらしていた・・。
彼女の名は狐桜〔こざくら〕。
その瞳から淡い涙は頬に零れる・・。
薄絹の衣は今にも自然と調和しそうな感覚・・。
そっとその場を立ち上がる狐桜・・。
「行くのか・・・?」
狐桜はただ罪人に過ぎない・・。
それがどんな意味を持つのかも分からない・・。
狐桜:古よりの碑文のままに・・
手を組み壁に寄りかかる彼・・。
赤い瞳が紅蓮の炎を恐怖に満ちる・・。
神々しい白銀の髪・・彼の名は麓〔ロック〕。
麓:狐桜がそれで動くなら俺達は着いていくだけ、瑪瑠〔める〕を見守る事が出来るのならな。
:だが、碑文はあまり知らないどんな意味を持つのかも・・。
瞳を閉じそっと狐桜は開設し始めた。
狐桜:あれの存在は罪人の中でしか語られぬ・・。
そう話すと麓の側から離れていってしまった。
回廊を進むとその先には七つのくぼみが収まる石版・・。
七つの柱・・中央には女神像・・。
狐桜の手に持つ水晶は一瞬の淡い光・・魔法陣・・。
唱えられし呪文は梅流達を見続ける・・。
罪人の来訪の鐘の音・・。
静かにその神殿に響き渡る・・。
雨音がまだ神殿の地下に響き渡る・・。
麓はまた考え始めていた・・。
何もかも捨ててまでこれを願ったのかも・・。
けれど始まってしまった事に後悔という言葉はない・・。
それでも見守り続けるしかない・・。
梅流と蔵馬を・・転生を2人が選んだのも自らの存在と力を消し去るため。
もう始まりは終わりへと告げる・・。
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