第五節 まほろばの願い
「瑪瑠・・」
ただ不安を抱き彷徨う心がいた・・。
それは束縛にも感じられた。
緑の瞳は今にもその場を離れてしまいそうな感覚。
白銀の髪は水に濡れている・・服も肌も・・。
一滴一滴の雨の雨音がその地では続く・・。
心に調和をしているようにも感じられた・・。
麓:ここに居たのか・・
雨音がザッザ・・ザッザと続く和音をする・・。
葉の雫はポチャンと泉に落ちる・・。
「麓・・すぐ戻る・・。」
緑の瞳はいらだつように閉じられる・・。
麓:瑪瑠の事になると感情を出すな・・汀兎〔ティト〕。
汀兎:ほっといてくれ・・関係ない・・。
汀兎の反応に麓は壁に寄りかかり手を組む・・。
微かな微笑みを見せ汀兎に顔を向ける・・。
麓:狐桜が何を考えてるかは分からない・・けど汀兎。
:お前の願うなら叶う・・瑪瑠の町に向かう。
汀兎:依頼をしたのは俺達だ・・分かっているだろ・・。
麓:あぁ〜
麓は一歩ずつ汀兎の方向へ向かう・・。
そして地面は水たまりがあり素足に感触を残す・・。
麓:汀兎・・前を見ろ事実を・・
汀兎:ほっといてくれ・・しばらく一人にさせてくれ・・
麓:勝手にしろ・・
麓と汀兎・・。
2人の気持ちはすれ違い交差し会う・・。
神殿内で麓は舌打ちをする・・。
麓:だから言ったのに・・
顔からは微かな涙・・。
暗い奥からは微かな人影・・。
狐桜だった・・。
2人の会話は何も聴いてないそぶりをする・・。
けれどその表情からは隠し切れない・・。
麓:何も聴かなかった事にいといてくれ・・
狐桜:そのつもりで・・す。私は貴方達に会わなかったら分からなかった・・。
:この傷跡も・・。いいえ・・何でもない・・。
狐桜は奥へと去っていく・・。
麓は微かに汀兎を見つめる・・。
雨の中地面に座り込む汀兎は悔しさを紛らしていた・・。
心の中でずっと瑪瑠を思い何も違和感を感じなかった。
けれど今の汀兎は戸惑ってばかりだった・・。
その場を静かな時が流れる・・歯車の時が・・・・。
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