第六節 最果ての記憶
そこには無邪気にじゃれあう少年・少女がいた。
まだ子供じみてその姿は兄弟の用であった。
赤い髪の少年。そう蔵馬には両親はいない。
蔵馬が幼い頃に両親は事故で亡くなった。
それからは少女、梅流の両親と共に暮らしていた。
けれど梅流の母親はその場にいない。
父親と梅流の兄、羅威だけ・・。
梅流の母親は梅流を産んで亡くなったと聴かされていた。
しかし真実は定かではない・・。
その時の少年・少女になど恋愛的感情はない。
ただ友人としていや兄妹としての絆の方が強かった。
そこは町から少し離れた森だった・・。
蔵馬と梅流は山に実る木の実を取りに遊びにいった。
羅威もそれに動向していた・・。
それがまだ幸せの日々であった事を彼らは知っていた。
悲劇はその数時間後・・。
梅流達の住む町は一瞬で焼け野原となった。
森にいた梅流や蔵馬・羅威は不安を抱き町に向かった。
けれどそれが案の上、奴らの思う壺だった。
彼らは野党であり金目の物を欲しいがままにしていた。
梅流達が町に着いた頃にはもう遅かった。
町の住民は森に素早く避難をしていた・・。
けれど梅流達が戻ってくるなどその時は誰もが思わなかっただろう。
それに感づいたのか父親は野党達に襲われる瞬間・・。
梅流や蔵馬をかばった・・側にいた羅威も戸惑った。
けれど梅流の父親の言葉が梅流達を生き延びさせた。
あれから蔵馬は梅流の前から姿を消した・・。
年が流れ五年後・・。
再び蔵馬はこの町に戻ってきた・・理由もなく・・。
そして町に鳥の鳴き声が響き渡る。
船の音も・・市場の住民の声も・・。
蔵馬:朝・・っか・・
その顔はさわやかなものだった・・。
過去を思い出す事で蔵馬は何かを見つけた・・。
もう後悔しない事を心の中で蔵馬は決めた・・。
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