第一章
過去、現代、未来、如何なる時を費やそうともその者の心の成長は人それぞれであった。
破壊、殺戮、嫉妬、欲望、願望、悲哀、その心は己の中で人それぞれに象徴され続けている。
永遠に変わることすらない心。人の思いによっては変わり得るのかも知れない・・・。
ただこれは過去を遡ることから始まり、自ら歯車を回し始めたであろう物語。
そう古代エジプトから未来に続く物語であることを忘れてはならない。
炎で赤く照らしだされた石の通路。その先の部屋から声が通路内に聞こえる。
その頃の王妃はただ何も知らぬ方が幸せだったのかも知れない・・・今後の行く末を・・・。
「お許し下さい。アクナディン様」
その後継を王妃は止めることは出来ずにいた。ただ無力な女、衛兵に首筋に刃を向けられ抵抗も出来ない。
ただ、神官である彼、アクナディンに今の王妃は逆らえない。アクナディンの欲望はあまりにも傲慢で有りすぎるから・・・。
中央の寝台に筋骨りゅうりゅうたる半裸の男が四肢をしばられ、横たえられている。
周りは全身をすっぽりマントでおおった数人の男達でとり囲まれている。
人と山犬をひとつにし神となし、さらにミイラとなす、様々な技の中で秘術中の秘術・・・。
その儀式を、アクナディンの欲望を誰が止められるというのであろうか・・・全ての始まりをただ静寂にあらわれるのだから。
古代の悲劇は始まりに過ぎない・・・そして王妃の魂を継ぎし者は来世でも悲惨は続いた。
その時代。人と交わることを許されない夜の生き者がいた・・・。性格には人であるのかも知れない・・・。
若きヴァンパイアの王、そしてその物語。全てが歯車だったのかも知れない・・。
そう古代エジプトから三千年の時を経て、現代に光のピラミッドが蘇るまでの微かな記憶。その刻み込まれし記憶。
夢の中で、私、が見続けた存在。それが今を運命を導いている。瀬人と王の関係を、そして千年宝物に関わる全てを・・・。
背負った存在がなんなのかを今悟ったような気がする決闘を彼らがする中で・・・。今の状況になる過去の全てを・・・。
幾度となく決闘は続く、最強を目指して、そう決闘王の称号を目指して・・・そして神のカードを欲して・・・。
ただ決闘者は、武藤遊戯にアンティールールを挑み、その日も童実野高校に強敵は集っていた。
なによりも、全てが変わってしまった。私も追い求めていたのだろうか・・・。ずっと待ち続けていたのだろうか・・・。
遠い遠い・・・遥かな私の存在。今の私に望んだ存在は側にいるのに・・・それが悲しいような辛い気持ちになる。
何故かは知らずに、その気持ちを追い求めずに・・・。私の瞳に惹かれるのは遊戯と瀬人だけ・・・。
心の中で幾度となく矛盾される・・・。気が付けば、あの泣き顔・・・夢の中で泣き続ける青銀の髪の彼女が脳裏に過ぎる。
泣き顔に乾ききった大地に血の雨・・・。十字のように剣は刻まれている後継。現実から遠のく真実・・・。
脳裏に過ぎる存在は、夢から現実へと覚醒を促すような感覚がある・・・なにもなかったように・・・。
杏子:?具合でも悪いの・・・。
杏子が私を心配そうに見つめている。ただ私の心にいまだに矛盾が続いているにも関わらず・・・。
私の目に惹かれるのは瀬人と遊戯だけ・・・それでも脳裏に過ぎる彼女が抱きしめている彼は、黒い翼を羽織った存在。
:ごめんなさい。最近寝不足なだけだから・・・。
そんな私の言葉に杏子は瞬きをしながら、驚いた表情を私の前で見せてくれる。
何故か、その表情が可笑しいはずなのに私の顔からは喜怒哀楽が・・・今の状態では出せるはずもなくて・・・。
杏子:無理しないでよ・・・。
私の頭を杏子はなでてくれる・・・幼馴染みの付き合いで、頼りになる親友。杏子の瞳は優しげだった。
教室内はいつもと変わらない放課後・・・けれども外では・・・。
:またかな・・・最近多いね!遊戯との決闘?しかもアンティールール使用・・・。
私は、夢の記憶を今は思い出さないようにしていた。ただその場で、私は周りに支えられているだけであった。
遊戯達も教室内では呆れかけている。そう神のカードを手にしてからはこの状態が続いているのだ。
おかげで放課後は、遊戯にとっても危うい状態でもあった。決闘王の称号を持つ以上はつきものなのかも知れない。
杏子:けど、案外遊戯だけじゃないかもよ・・・この学校には海馬君もいるし・・・なにより・・・。
:私はもう決闘は引退したって・・・その称号の名は噂だけにしてよ・・・。
私は、この童実野高校に転校する前は父の頼みもあってイギリスで学問に励んでいた。
決闘を始めたのもそんな時期だった。けれどもある事が私を変えてしまった・・・決闘をやめてしまった。
それが夢だった。その夢が決闘をしていても脳裏に過ぎって、童実野町に引っ越してから・・・たった数ヶ月で決闘をやめた。
イギリスにいた頃の私の腕は、世界中に知れ渡り、私が決闘を引退した理由を誰一人知らない・・・だから伝説になった。
杏子:ねぇ〜、本当にもう決闘をしないの?まだ悩んでるの・・。
杏子の今の顔は、私にとっては苦手だ・・・。小学校で日本を離れてしまった私は杏子とは手紙のやり取りしかしてなかった。
けれども、決闘者になったことを杏子だけが最初に知っていた。私が大会に参加してることも・・・。
だからあの時、決闘王国の時になる前だった・・・一枚杏子に渡したのだった。
それは日本に帰ることが分かった時だった。手紙に同封したのだった友情を忘れない為に・・・フレンドシップのカードを・・・。
:杏子、これは私が決めたことだから・・・もう黒き竜使いの噂を時期に消えるよ・・・。
決闘者をやめて何年かたったのに・・・いまだに決闘者の感覚が心に残っている。
カードも捨てることなんて、出来なかった。私の築き上げた結果は、私だけのものだから・・・。
杏子:海馬君も同じことを言ってた双璧の竜使いの噂があるって・・・。
その噂は、イギリス内では既に知られている。白き龍使いと黒き竜使い・・・。
杏子の話は、私の心を悩ませない。決闘をやめても何処かで因果があって、とぎれることはない・・・。
:確かに瀬人とは幾度となく決闘を申し込まれたよ・・・。でも・・・。
噂を知ったのは決闘を始めてから数年の出来事、何度か決闘を申し込まれた。それはもう過去・・・。
私の心は晴れている・・・。けれども決闘をする中で、私の心に矛盾があった。
杏子:・・・?
杏子の声は私には優しすぎる。何故だか、心が虚しさをます・・・。いつも私は忌まわしい存在を見つめる。
右手の刻印は消えることはないし・・・。私の家系では珍しくもなかった。元々、生まれついての印だったから・・・。
:ごめんなさい・・・今日はもう帰らせて・・・。
学校では決闘を忘れることは出来ない・・・。それが真実・・・。
杏子:ねぇ〜一つだけ聞かせて、イギリスに纏わった物語・・・双璧の竜の・・・。
イギリス内で広まった伝説。その伝説が本当なのかは知らない・・・。
確かにそんな神話がある・・・。数千年前・・・私たちが知らない。古代エジプトより先の時代の物語。
:今度・・・ね・・・青眼の白龍と真紅眼の黒竜の話・・・。
本当に下らなかった。私には、何故か興味の薄れた存在で・・・。その日は、ただそのまま終わる・・・。
夢の中の彼女は、いつも茶色の髪の彼を殺める・・・。その手は黒い刻印で覆われていて、手の甲には竜が描かれていて・・・。
その呪いが消えた時の彼女は彼を見つめながら泣き続けている・・・。ただ謝る声が聞こえる「ごめんなさい・・・」と何度も呟いている。
部屋に帰っては、幾度も悩まされる。それはこの童実野町を訪れてからという日々・・・。何を求めているのだろうか。
本当の意味で夢の存在に悩まされる・・・デッキを見つめている安堵・・・真紅眼の黒竜の問いかけ・・。
彼奴は決闘を申し込んでも断り続ける。理由をただしても答えてはくれない・・・。
だが、彼奴の弱音を俺は一度知ってしまった。それ以来、彼奴に惹かれている・・・そう言えば、一度聞いたことがあった。
:夢に、いつも貴方が写るの・・・その貴方の瞳は悲しくなくて・・・。貴方は私だけを見つめているの・・・。
その時は、何をうなされていたのかは分からなかった。彼奴の父とは長年のつきあいだ・・・。
だが、娘の悩みを聞いてくれと言われた時期は、俺も戸惑った。だが、彼奴は俺のことで悩んでるのだと思った。
何も知らない方が、いいのだろうな・・・俺にとって・・の夢を俺は知っている・・・だからだろう。
神を越える力・・・ペガサスは私にそのカードを託した・・・。何故かは知らなかった。
青眼の光龍の存在・・・そしてそれに惹かれる私・・・同じ経験をした気持ち・・・。全てが分からない・・・。
扉を叩く音が響き渡る。今は、一人の方が私にとってはいいのに・・・。
:はい・・・
返事はするけれども、用件だけは聞く・・・自宅では頼まれごとはあまりない・・・。
ただ周りは私の事を社会的立場でしか認めようとしない・・・。
「お嬢様にお客様が・・・お話があると・・・」
:直ぐに向かいます・・・。
本当の気持ちは逆だった。いつも私の願い通りにはならない・・・。
お客はやはり瀬人だった・・・。もう幾度となく、彼はこの関係を続けている・・・。
:決闘は致しませんと幾度となく申し・・・。
私の口は瀬人に寄って遮られる・・・。相変わらずの強い眼差し・・・話す言葉を遮る・・・。
そうしてまた私は瀬人に惹かれ続けているのだから・・・
瀬人:決闘を申し込む訳ではない・・・。、ペガサスから預かったカード、渡して貰おうか!
:どうして、そのカードのことを・・・。
私の震えは戸惑った、あのカードは表には出されておらず、まだ誰も知らないからだ・・・。
そして親戚関係になる私に渡されたのも先日の話・・・。
瀬人:気にするいわれではない。アンティールールにおいて頂くだけだ・・・。
:が所持している事は、ペガサスから聞いただけ・・・俺はそのカードに用がある・・・。
:どういうこと・・・。
瀬人の口調が変わった。何故だか分からないけど、そんな感じを漂わせた。
そして、静かに語りだした・・・。先程までの出来事を・・・そして私の脳裏にまた過ぎる・・・。
ただ、運命がもう一つ始まりを告げる・・・。双璧竜の物語は神話をなって・・・。
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Music Box/FINAL STAGE by:時の回廊 |