水 龍


第三章
一体さっきのはどうしたというんだろう・・・。 瞳は冷たい色を灯していて・・・生きる事を諦めた人のようだった―――。 さっきのは・・・ではない・・・違う女に見えた。 アイツはもっと・・・もっとバカみたいに明るくて・・・笑顔の絶えない奴で・・・。 さっきの女は誰なんだ―――? 「どうしたの?エド」 一人考え事をしていると後方からに話し掛けられた。 「あ・・・いや・・・別に・・それよりも見回り終わったのか?」 「うん。一応ね。・・・今の所は敵らしき敵はいなかったよ」 「そ・・・っか・・・」 「――――――?  エド・・・やっぱり元気ないよ・・・どうしたの?具合・・・悪い?」 そりゃぁ・・・ 目の前で妊婦を殺されれば気も滅入る――― そうは思っても口にはしない。仕方のない事だから―――。 イシュバール人を殲滅する事が軍の狗である俺達の”仕事”だから―――。 だから・・・俺は平気なフリをする。 「ん・・・大丈夫・・俺・・・招集されるのは初めてだから緊張してるだけだ」 「そ?ならいいんだけどね」 それだけ会話すると二人とも黙り込んでしまった。
沈黙はどれくらい続いただろうか? ソレを破ったのはだった。 「ね・・・エド・・昔話・・・してあげよっか?」 「昔話―――?」 「うん・・でも、昔話というより神話みたいなモノかな?  一応この話のヒロインは神様だし」 「ふーん・・・今の所は暇だし・・・聞かせてくれ」 「うん!」 肯定したの瞳は笑っていなかった―――。 唇は笑みを作っているのに・・・。 瞳だけは・・・笑っていなかった。 「昔―――数千年も前の話です」 そんな―――古典的な件で始まった。 そして・・・俺はいつしかその話に吸い込まれていっていた。
昔・・・ある水園にそれはそれは美しい水龍がいました その龍は、別名“神龍”とも呼ばれ同じ龍族からも・・・人間からも恐れられていました その龍はずっと・・・ずっと・・・今住処としている水園から人里に下りてみたいと願っていました ですか――― もし、自分が人里に行けば人間達は驚き逃げ出してしまうでしょう そう思った龍は、人間に化けられるだけの力を手に入れるために初代神龍の力が眠っていると宝玉を――― 自らの体内に溶け込ませました そして その宝玉の力を完全にモノにするために長い―――長い眠りにつきました。 どれ程の時間を眠り続けていたのでしょうか・・・ 数十―――イヤ・・・数百年程眠りました。 そして――― ある時 「我の眠りを覚ますものは何者じゃ?」 その龍の眠りを妨げる者が現れた 「我が名は龍牙・・・主の万物をも凌駕する力を欲している者だ」 眠りから覚めたばかりなのかぼんやりとした頭でそのニンゲンの姿をみる 龍牙と名乗る奴は声色とは裏腹に、切羽詰った顔をしていた。 「我の力が必要なのか」 「さよう―――」 その龍とニンゲンは戦い・・・龍は負けた。 負けたなら協力すると約束していた龍は、 数百年もの時をかけて身体に馴染ませた宝玉の力を使い人間に化けた―――。 しかし――― その人間に協力した所為で龍の運命は激変しました。 もし――― あの時 龍牙と名乗る男に協力しなければ悲惨な運命に踊らされる事もなかったでしょう 水龍は、龍牙の手によって殺められてしまいました 龍は龍牙を愛してしまっていました 龍族の身でありながら人間の男を愛していました 何て愚かしく 要らぬ感情を持ってしまったのでしょう だから――― 殺められる直前まで抵抗が出来ませんでした なんて――― なんて 悲しい事でしょう 龍牙は――― その龍を愛していた事に魂を奪ってから気づいたのです 嘆きました 宝玉に入った龍の魂はこんこんと氷のように冷たい色で灯っていました 人間の龍牙では魂を宝玉に封じる事は出来ても出す事は出来ないのです 悲しみました 龍牙は、せめてもの償いとして龍の亡骸と魂を封じた宝玉を水園で持って行きました 泣きはらした顔で水園を見つめ――― その亡骸と宝玉を、透き通った綺麗な湖の中に沈めました そして――― 龍牙は住んでいた街へと戻り――― いつしか、素敵な女性と結婚をし・・・ それはそれは幸せに生涯を終えました あ――― まだ、水龍の名を教えていませんでしたね 水龍の名は――― 「  」
の瞳が妖しく光る 「しかし、これで話が終わった訳ではありません」 宝玉に魂を封じられてから数千年後――― ある男が水園へと訪れた。 その男は、水園からの亡骸と魂を封じられた宝玉を水を全て蒸発させ手に入れました そして 男の力で宝玉から魂を亡骸に移し替えました それから――― はその男に感謝の意を込めて使えています 勿論今も――― しかし には成し遂げたい目的がありました それは――― あの時自分を宝玉に封じた男の転生先に復讐する事でした は今でも龍牙を怨んでいます 怨んでも 怨んでも 怨みきれない程にも――― その憎悪は身体中を支配し――― いつしか、の感情は全て偽者になってしまいました これは 悲しい 悲しい 少女の話でした 「 エド 」 自分の名を呼ばれるが返事が出来ない しかし、返事がなくともは話を続けた 「ね・・・エド・・龍牙の転生先・・・ってどこだと思う?」 は満面の笑みで聞いてきた しかし、答える事が出来ない 答えてしまったのならば・・・それだけで全てが終わってしまう気がしたからだ 「分からないかな?」 その問いにも答えられない 「仕方ないな・・・ オ シ エ テ ア ゲ ル 」 赤い唇が僅かに開く 「エドワード・エルリック」 ア ナ タ ノ コ ト ヨ

Music Box/Kohzas Station by:覚醒
シリアスバンザイゴメンナサイ!
更新が予想以上に遅くなってしまいました!

そして!予想外の展開ですよね!?
まさか、エドが龍牙の転生先だったとは自分でも驚きです(何

三話で終わらすハズだったのですが・・・中々これが難しく手ですね;
もう暫く続きます。暫しお付き合い下さい。

それでは、次回までアディオス★

著者 月瀬 葬華《夢雨》様