第五章
の爪が俺の肩を切り刻む。
の爪が俺の頬を傷つける。
そして
俺の攻撃なんてひとつも当たっちゃいなかった―――・・・
ドン―――
エドワードが、地へと叩きつけられる鈍い音が響く。
「あら・・・あっけないのね―――あれだけ虚勢を張っておいて・・つまらないわ」
そう言うの瞳は暗く陰りが帯びていて・・・どこか哀しげだった。
でも・・・哀しそうなのに・・・
哀しそうに見えるのに、の口は笑みを讃えていた。
ゴッ―――!
「―――っ」
の爪が丁度俺の顔近くの地へと突き刺さる。
「何を考えているの? "殺し合い"をしているというのに・・・
つまらない事を考えている場合じゃぁないでしょうに・・それとも、余裕だっていうの?」
そう言うと・・・くすくすと笑った。
「怪我をしているのは、あなただけなのに・・・私にはかすり傷さえ与えられないくせに・・・」
不意に、長くしていた爪を元の"人間の"長さに戻した。
そして、何を思ったかエドワードの上に跨るような体勢を取り、その頬を両手で包んだ。
「ねぇ・・・龍牙・・もう、つまらない抵抗なんて止めなさい」
そんな事したって、痛みが続くだけでしょう?―――とその瞳が言っていた。
だけど・・・俺は―――!
パシン―――ッ!
「うるせぇ・・・」
頬を包んでいるの手を払い言った。
「俺は死なないつったら死なねぇんだよ!」
「・・・・・」
は払われた方の手を摩ると、鋭い眼孔でエドワードを睨んだ。
きっと、普通の人間であればそれだけで硬直していただろう・・・。
だけど、エドワードは違った。そんな・・睨まれただけでは臆する事をしなかった。
今よりも・・・怖い哀しい思いはとっくの昔に体験していたのだから―――。
「そう・・・でもあなたは必ず死ぬわよ」
まるで、それが当たり前かの様な声で言った。
「・・・ほら―――私が、本気を出さなくても殺すことが出来る」
冷淡な声で言うの視線の先を見れば―――
「―――っ!?」
エドワードの左腕に矛となった爪が突き刺さっていた。
「あ゛あ゛ア゛あ゛ア゛あ゛ア゛―――!」
エドワードの叫びが響き渡る。
「ほら、あっけないでしょう?この矛をあなたの首に刺すだけで、私の夢は叶うのよ」
戯れを知らない子供の様な笑みを讃えて・・・残酷な事を言った。
「サヨナラ―――愛しい愛しい龍牙」
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Music Box/沙羅双樹 霞蛍火 by:灯籠流し |